2008年6月4日(水)「しんぶん赤旗」

主張

財政審建議

「安心」とはよく言えたものだ


 財政制度等審議会(会長、西室泰三東京証券取引所会長・元東芝会長)が、来年度予算についての「建議」(意見書)をまとめました。

 小泉内閣が決めた二〇〇六年版の「骨太方針」を引き継ぎ、社会保障の自然増を五年で一・一兆円、毎年二千二百億円も削減する路線を堅持するよう求めています。

 医療も介護も生活保護も抑制を打ち出しました。雇用保険の国庫負担の全廃を盛り込み、教育予算の増額を拒否しています。

くらしと経済の破壊

 財政審の建議は、骨太方針の堅持によって社会保障を持続させ、経済成長を続けて、「将来にわたって安心して生活できる」社会を実現すべきだとのべています。「よくもぬけぬけと」とはこのことです。国民のくらしへの目線があれば、こんな絵空事は描けるはずがありません。

 小泉内閣が社会保障の抑制路線を敷いて以降、政府は年金保険料を毎年値上げし、患者を医療や介護から追い出して、多くの社会保障「難民」を生み出しています。福田内閣は、お年よりに負担増と医療差別を押し付ける「後期高齢者医療制度」の実施を強行しました。

 自公政府は生活保護にまで切り込み、ぎりぎりの生活を余儀なくされている高齢者や母子家庭の生活保護費さえ減らしています。窓口で扉を閉ざされ、保護を打ち切られて餓死や自殺に追い込まれる事件が相次ぎました。社会保障の抑制路線は国民から生存権を奪い続けています。

 財界の要求に従って自公政府が規制緩和を繰り返し、非正規雇用を増やして貧困を広げています。社会保障の改悪が追い打ちをかけ、内閣府の世論調査でも生活不安を感じる人は過去最悪の69・5%に達しました。二割以上の人が貯蓄ゼロ、貯蓄が百万円未満の人も数年前に比べ倍増し、庶民の生活は文字通り、がけっぷちに追い詰められています。

 「構造改革」は可処分所得を抑え込んで“構造的”に家計消費を冷え込ませています。政府の月例経済報告は企業の好調が家計に波及するという見通しを取り下げました。日銀の「経済・物価情勢の展望」も、「生産・所得・支出の好循環メカニズムが維持」「好調な企業部門から家計部門への波及」の表現を削除しました。大企業がもうければ、いずれ家計に波及するという政府の成長シナリオは完全に破たんし、袋小路に迷い込んでいます。

 社会保障の抑制路線を続けるなら、国民の安心も経済の安定も土台から掘り崩される一方です。

 これ以上の社会保障の削減は限界だという声が与党内からも上がっています。骨太方針の深刻な矛盾の表れですが、与党内の要求は同時に消費税を増税することです。財政審建議も「消費税を含む税体系の抜本的改革」の早期実現を掲げています。

逆立ち政治の転換を

 消費税は低所得層ほど所得に占める負担が重い逆進性を持ち、大企業は価格への転嫁で負担を免れる極めて不公平な税制であり、社会保障には最もふさわしくない税金です。増税を許すなら、庶民には「低福祉・高負担」という日本の財政のゆがみをさらに広げざるを得ません。

 歳出をどんどん削れば“増税をしてもいいからやめてほしい”という声が必ず出てくると小泉元首相は言っていました。どう転んでも庶民を痛めつける卑劣な「わな」です。

 骨太方針を「ゴミ箱行き」にし、大企業に減税、庶民に負担増の逆立ちした政治を転換させようではありませんか。



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