2008年5月26日(月)「しんぶん赤旗」

与党PTの法案論点

派兵恒久法で警護・治安活動


 自衛隊の海外派兵を常時可能にする恒久法を検討する与党のプロジェクトチームが二十三日に初会合を開きました。

福田・太田会談

 初会合は二月以来先送りされていましたが、十七日の福田康夫首相と太田昭宏・公明党代表との会談を機に動き始めたもの。週二回ペースで議論し、今国会中の要綱とりまとめをめざします。

 恒久法制定を最大のテーマとして四月に活動を再開した「新世紀の安全保障体制を確立する若手議員の会」も、週一回の学習会の一方で自民・民主・公明議員による法案づくりを検討しています。同会には与党から七十人以上が参加する一方、前原誠司民主党副代表、長島昭久同党副幹事長ら三十人以上の民主党国会議員が参加しています。

 恒久法検討の動きが活発化しているのは、来年一月の新テロ特措法の期限を考えれば、秋の臨時国会では活動継続の方策を確定しなければならないという“事情”があります。新テロ法の改定か恒久法かで与党内の意見は分かれるものの、福田首相らは民主党を誘い出せる恒久法推進に執着しています。

海外での武力行使

 二十三日の与党のプロジェクトチームでは、「一般法(恒久法)の主要な論点」とするペーパーが配られました。与党が目指す恒久法の骨格を示すものです。重大なことは、恒久法が単に従来の海外派兵法の延長にとどまらず、これまで憲法に違反するとして認められてこなかった海外での武力行使に向けたものであることが大きく浮かび上がってきたことです。

 「主要な論点」では、「我が国が行う活動のメニュー(類型)」として、(1)停戦監視(2)人道復興支援(3)後方支援などに加えて、(4)警護(5)治安維持(6)船舶検査などを行うことが検討項目に加えられました。警護や治安維持、強制的な船舶検査は武力行使を伴うことからこれまでの海外派兵法では盛り込まれなかったものです。

 さらに「我が国が行う活動のメニューにあわせて、それに必要な武器使用権限(いわゆる『駆けつけ警護』や任務遂行のための武器使用など)についても検討が必要」だとしています。

 これらをあわせて考えるとどうなるか―。「警護」や「治安維持」活動は、怪しい人物に対する停止・身体検査・拘束のほか、住宅や建物への立ち入り、捜索・押収などの強制措置を中心内容とします。「それに必要な武器使用」を認めれば、“怪しい者”が抵抗したり、それを手助けする者がいる場合には武器を使用してもよいことになります。アメリカ軍がイラクなどで住民虐殺につながっている対テロ掃討作戦と同じです。憲法が禁じる海外での武力行使であることは明白です。

 「駆けつけ警護」は、同盟国の軍隊などが攻撃を受けたときに「駆けつけ」て反撃するもので、集団的自衛権の行使につながります。

 二十三日の会合では、「憲法の範囲内」「解釈改憲はおこなわない」などを検討の原則としましたが、検討内容は憲法の範囲をはるかに超えているのです。(中祖寅一)


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