2008年5月25日(日)「しんぶん赤旗」

主張

差別医療廃止法案

「命より帳尻」の根本を正せ


 日本共産党など野党四党が共同し、後期高齢者医療制度の廃止法案を参議院に提出しました。

 法案は後期高齢者医療制度を今年度限りで廃止し、元の老人保健制度に戻すと定めています。緊急措置として保険料引き下げ、六十五歳以上の国保料を含む高齢者の保険料の年金天引きの中止を、遅くとも十月一日までに実行することなどを盛り込んでいます。

「制度の根幹」に問題

 福田内閣と自民党、公明党は再び後期高齢者医療制度の「見直し」を口にせざるを得なくなっています。

 政府・与党が検討しているのは年金天引きの見直し、保険料の軽減、延命治療の打ち切りにつながりかねない診療報酬制度(終末期相談支援料)の凍結などです。舛添要一厚労相が「制度の根幹は動かさない」と表明しているように、いずれも部分的、一時的な手直しにすぎません。

 福田康夫首相は「国民に制度の趣旨を理解してもらうため最大限の努力をおこなっていく」とのべています。問題は制度ではなく“国民の理解が足りない”ことにあるとして責任を国民に転嫁する発言です。七十五歳という年齢で差別する制度がどれほど大きな衝撃をお年寄りに与えたか、どれほど寂しい思いをお年寄りに味わわせているか。小手先の「見直し」で済ませようという姑息(こそく)な対応は、お年よりの気持ち、怒りがまったく理解できない政府・与党の貧しい心根の表れです。

 この制度の最大の問題は、まさに「制度の根幹」にあります。年齢で区切って、それまでの医療保険や扶養家族から強制的に切り離し、差別医療を押し付ける制度に送り込むこと自体が根本から間違っています。

 舛添大臣らは後期高齢者医療制度は「国民皆保険を守るためだ」などと弁解していますが、歴代厚労相は次のように答弁しています。

 「後期高齢者医療制度を別建ての保険制度にする理由は何かというそもそもの話は、どうしても医療費というところから出ていることは否定できません」(二〇〇五年十月、尾辻秀久厚労相)。「一番医療費がかかる世代というものを明確にしながら現役世代の負担を明確にし、わかりやすい制度とする必要がある」(〇六年四月、川崎二郎厚労相)

 自民党・厚生労働副部会長の西島英利参院議員が“わかりやすく”解説しています。「後期高齢者は『みとり』の医療という考え方で、積極的な医療よりは『みとり』の医療を中心にした新しい診療報酬体系をつくっていけば、それに対してまさしく医療費の適正化が行われる」(〇六年三月、参院厚生労働委員会)

 「一番医療費がかかる世代」として七十五歳以上を別枠の制度に囲い込み、“さらし者”にした上で、差別的な医療を押し付けて医療費を抑えようという話にほかなりません。

脅しは通用しない

 舛添大臣らは元に戻せば国保が破たんすると強調していますが、こんな脅しは通用しません。

 市町村の国保財政が危機に陥ったのは歴代政府が国庫負担を減らし続け、規制緩和で非正規雇用をまん延させて労働者を健保から締め出し、国保に追いやったことに原因があります。国庫負担の水準を回復し、雇用に対する企業の責任を果たさせることによって、国保の財政危機を解決することこそ政治の責任です。

 医療費の帳尻合わせのために、お年寄りの命と健康をないがしろにする後期高齢者医療制度は廃止する以外にありません。



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