2008年5月21日(水)「しんぶん赤旗」
主張
社教関連3法案
社会教育から自由奪うな
趣味やスポーツ、子育てから学習会…。公民館や博物館、図書館は楽しく、みんなを元気にする地域の拠点です。これを台無しにしかねない法案が国会で審議されています。
改悪教育基本法の具体化としての「社会教育関連三法(社会教育法、博物館法、図書館法)改正」案です。
「学校支援」行政への協力
社会教育は、自由に自発的におこなう国民相互の自己教育で、学校教育以上に、自由・自主性が認められています。これは、戦前の社会教育が、国民総動員法のもとで、国民を統制・組織するために利用され、「天皇奉仕」を強制した歴史の反省のうえに確立した原則です。
国も教育基本法改悪が審議された国会で、「家庭教育や社会教育については、教育を行う者に具体的な教育内容がゆだねられている」(小坂憲次文科大臣、二〇〇六年六月八日)と答弁していました。
ところが社会教育法の「改正」案は、公民館などでの「学習の成果を活用」して、「学校地域支援本部」に協力させようとする条文をあらたに加えています。学校地域支援本部といえば、東京・杉並区の和田中学校で進学塾による教室を導入した主体として有名になったものです。文科省は中学校区に一つという形で全国に設置しようとして、今年度は五十億円の予算を計上しています。
公民館の関係者は「官製団体の下請けのような仕事では、公民館活動に参加しているおとなの活力がなくなり、かえって子どもへの支援が衰退する」と危惧(きぐ)します。
国は学校教育を、改悪された教育基本法でさだめた「愛国心」「伝統」などの「教育の目標」でしばろうとしています。公民館をこうした「学校支援」行政に組み込むことは、公民館の自由・自主性をおおきく損なう危険があります。
また法案は社会教育にたいする国と地方の任務に「生涯学習の振興に寄与する」を加えました。生涯学習は首長部局に属します。さらに法案は、社会教育の計画を策定するなど社会教育の自治を保障している社会教育委員の会議を、「他の合議制の機関」で代替できるとしました。
こうした「改正」は、社会教育を首長部局のもとに再編する圧力となります。この点でも、社会教育の自主性が損なわれる心配があります。
いま、社会教育に切実に求められているのは、劣悪な条件の改善です。
公民館の運営に必要な公民館主事は、一館当たり〇・九七人しか配置されていません。
博物館では、独立採算制の圧力が高まり、学術会議が「博物館が入場者数ばかりに目を向けた『経営』重視の『遊興の場』に堕する危険」を警告するまでになっています。
図書館は予算を大幅に削られ、都道府県立図書館の資料費は三分の二です。図書館のない自治体は三割近く、一館しかない市町村は六割以上です。人口当たりの図書館数は先進国で最低です。
施設整備と人員配置を
法案は条件整備に一言も言及がありません。その一方で、法案は各施設に「運営評価」の努力義務を課しました。経営効率や集客などの評価が評価基準になれば、施設の有料化や住民サービスの低下、人員削減や指定管理者制度の導入などをまねきます。
日本共産党は、社会教育の自由・自主性をうばう「社会教育関連三法改正」案に反対するとともに、社会教育の施設・専門的な人員の充実をつよくもとめます。