2008年5月16日(金)「しんぶん赤旗」

保育制度改変へ「直接契約」浮上

厚労省素案に不安と懸念


 厚生労働省が保育制度の大幅な改変に乗り出しています。検討内容には、保護者が保育所と「直接契約」する方式の導入など、いまの仕組みを大きく変えるものを盛り込んでいます。親や子どもの願いにかなったものでしょうか。(坂井希)


 九日開かれた厚労省の社会保障審議会少子化対策特別部会。少子化に対応するための「新たな制度体系の設計に向けた基本的考え方」の素案が示されました。

保育所格差も

 素案の柱は(1)子育て支援サービスの量的拡大(2)サービスの質の維持・向上(3)財源・費用負担について―など。このなかで「保育のサービス提供の仕組みの検討」が大きく位置づけられました。

 そこでは「保護者とサービス提供者の契約など利用方式のあり方」を検討するとして、「利用者の多様なニーズに応じた選択を可能にする方向」を打ち出しました。保護者が各認可保育所に直接入所を申し込む直接契約方式の導入を念頭に置いたものです。

 いまの方式は、保護者が希望する保育所を選んで市町村窓口に申し込み、市町村が保護者の状況をみて優先度の高い順に入所を決めています。保育料は所得に応じて市町村が設定します。自治体の責任で、必要な保育を保障するためです。

 これに対し「直接契約」は、保育に対する国や自治体の責任を大幅に後退させるものです。保育料の設定も施設側が行うため、現状より高くなることが想定されます。保育所間の格差が生まれる恐れもあります。

 素案は、「完全な市場メカニズムとは別個の考え方」として「準市場メカニズム」という考え方を踏まえるとしていますが、格差に歯止めになるかどうかは不明確です。

もうけの場に

 直接契約方式は、保育を「もうけの場」にすることを狙う財界などが、強く要求してきたものです。日本経団連は昨年十一月に発表した少子化問題での提言で「直接契約」を主張。ことし三月に閣議決定された「規制改革推進のための三カ年計画(改定)」でも「直接契約方式」の導入が明記されました。

 四月二十三日の経済財政諮問会議では、御手洗冨士夫・日本経団連会長ら民間四議員が「保育サービスの規制改革」を提唱。「保育サービスを『措置』から利用者の『選択』に転換する」と、直接契約方式を求めました。福田康夫首相も同会議で、「保育の規制改革」は「長年の懸案」だとして、年内に結論を出すよう舛添要一厚労相に指示しました。

 素案の背景には、このような政府・財界の強い意向が働いています。

 厚労省は十九日にも「考え方」を取りまとめる構えですが、保育制度の市場化・規制緩和には、一方で強い批判があります。素案が示された九日の社保審特別部会でも、懸念の声が相次ぎました。

 駒村康平・慶応大教授は「『準市場メカニズム』は無制限な自由市場化ではない。民間が何をしてもいいということではない」と発言。庄司洋子・立教大大学院教授は、東京都が国基準を大幅に緩めて導入した認証保育所制度のもと、保育の質が低下する事態が生まれている例をあげ、「規制緩和すれば、こういう事態が起こる」と強く警告しました。


 認可保育所 児童福祉法に基づく児童福祉施設。施設の広さ、保育士数、給食設備などの基準を満たして認可される。地方自治体が運営する保育所(公立)と、社会福祉法人などが運営する保育所(私立)があり、公費と保育料により運営されている。


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