2008年4月19日(土)「しんぶん赤旗」

欧州温暖化対策調査団

笠井亮団長の報告(上)


 日本共産党の欧州温暖化対策調査団が十八日おこなった報告集会での笠井亮団長(衆院議員)の報告大要を紹介します。


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(写真)報告をする笠井亮団長=18日、衆院第二議員会館

 今回、地球温暖化対策をめぐる欧州の実情を調査するということで、ドイツ、イギリス、EU(欧州連合)本部と十日間回ってきました。

(1)調査の目的

 まず、今回の調査の目的です。

 今日、地球温暖化から人類の未来をいかに救うかが、世界でも日本でも焦眉(しょうび)の課題となっています。今年は、一九九七年の京都議定書で国際社会が決めた温室効果ガス削減目標達成のための第一約束期間(二〇〇八―一二年)の初年です。七月には洞爺湖サミット(主要国首脳会議)が予定されています。

 それだけに、京都議定書の議長国である日本は、京都議定書で約束した温暖化ガスの削減目標を達成するとともに、約束期間後のとりくみについて、地球環境を守る国際的責務を果たすことが強く求められています。

 こうした観点から、日本共産党としてぜひ政策提言を行う必要がある。私たちは、その作成に資するよう、ドイツ、イギリスおよびEU本部を訪れて、欧州における先進的なとりくみをつかむことをめざしました。

(2)主な訪問先、日程と概要

 いずれの懇談・調査でも、わが党が、ヨーロッパの先進的なとりくみをつかんで、それを参考にして、洞爺湖サミットに向けて日本政府に提言したいというとたいへん歓迎されました。内容上も、温暖化対策のあり方ではほぼ一致し、各国の基本的立場、とりくみ、今後の課題など、直接つかむことができました。

 また、各国の政府、産業界をはじめ関係者との新しい関係を築くことができ、さらに今後の情報・意見交換などのコンタクト(メールなど)を確認するなど、貴重な財産となりました。協力をいただいたすべての方々に、改めて感謝を申し上げる次第です。

(3)調査を通じて分かったこと――野心的目標で達成にとりくむ欧州。日本との違い

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(写真)ロンドン市内のCBI本部で、マシュー・ファローCBI環境課長(中央奥)と懇談する笠井衆院議員(その右)=3月18日(岡崎衆史撮影)

 今回の調査を通じて分かったことについて報告いたします。私たち調査団は、三カ国二十四カ所、二十九回の聞き取り、懇談、視察を通じて、地球温暖化にとりくむヨーロッパと日本の基本的姿勢の違い、日本の政府や財界が立ち遅れているというより、むしろ顔の向きが逆になっていることを、三つの点で、一同痛感させられました。

(1)地球の気候変動の重大性をどうみているか、緊迫感・切迫感の問題

 第一が、ヨーロッパでは、地球の気候変動の重大性を認識し、緊迫感・切迫感をもってとりくんでいるということです。

 今回の話し合いでは、どこでも、世界の科学者が協力して温暖化の被害や抑制策を検討したIPCC(気候変動に関する政府間パネル)報告、そして、イギリス政府の求めで経済学的観点から二〇〇六年にまとめられた「スターン・レビュー(報告)」の内容がドイツでも引用されるなど、どこでも科学的知見が真剣に語られ、とりくみの大前提になっていることがよく分かりました。

 「気候変動の経済学」と題する「スターン・レビュー」では、「気候変動は、経済学に対して今までにない類の挑戦を迫っている。それは、いまだかつて見られなかった、非常に深刻で広範囲におよぶ市場の失敗である」としています。

 今日の危機をつくりだした根源には、環境破壊をかえりみず利潤追求第一主義に走ってきた巨大資本の活動があった―そのことへの反省を改めて読み取りました。だから、そこに焦点を当てた対策こそ求められているのです。

 「本レビューで集められた知見を総合すると、ひとつの単純な結論にたどり着く。つまり、強固で早期な対策によりもたらされる便益は、対策を講じなかった場合の被害額を大きく上回る」「早期に効果的な対策を実施するほど、対策コストを低く抑えることができる」

 日本の政府や財界にぜひしっかり読ませたいですね。向こうではしっかり読んで、そういう立場にたっているから、懇談でも、「気候変動は否定し得ない現実であり、今後の気温上昇を産業革命時比で二度以内に抑えることが至上命令であり、そのために先進国が率先して温室効果ガスの大幅削減をする必要がある」という認識と共通の決意が口々に語られました。

 それでもまだ認識が足りない。四月十七日付のイギリスの新聞フィナンシャル・タイムズによりますと、この報告をとりまとめた世界銀行の元チーフ・エコノミストだったスターン卿が、「地球温暖化を過小評価していたことを認めた」と報じました。それほどの切迫感が広がっているのです。

 だからこそ、先進国が二〇五〇年、二〇二〇年に向けた「野心的な削減目標」を掲げ、それは必ずやりきらなければならない、一国ではなく欧州全体あるいは全世界が一致して挑戦しなければならない。科学的知見にもとづいた政治のリーダーシップのもとで、「偉大な模索と実験」が果敢にとりくまれている。

 「この課題は、やれるところまでやればいいという問題ではなく、必ずやりきらなければならない課題ですよね」と問いかけると、どこでも「その通り。そこが肝心なんだ」と返ってきました。

 この観点から、中長期の目標をきちんと設定しています。イギリスの場合ですが、英議会のチェイター下院議員は、「ガス削減を世界で初めて法的に義務化する気候変動法案の審議のなかで二〇五〇年までの削減目標を60%から80%に引き上げる方向が強まっている。26―32%の中期削減目標を掲げている」とのべていました。この法案は、私たちの訪問後の三月末、上院で原案を強化した修正案が通過し、下院に送られ、今夏までの成立をめざしています。

 ドイツも、二〇五〇年までに80%削減することをめざし、中期目標として、二〇二〇年までに40%削減するための総合的な法制化が、ことし五月をめどに進んでいます。

 欧州委員会では、環境総局のスリンゲンベルク課長によれば、「EUが二〇五〇年までに世界で半減、先進国で60―80%の削減をめざし、中期目標として二〇二〇年までに20%、他の先進国が同様の政策をとる場合は30%という削減の絶対目標を掲げている」として、国際交渉でリーダーシップの維持を図っている。「途上国が加わる温暖化防止体制を築くためにも先進国が責任を果たさねばならない」と強調していました。

 財界の基本的対応も、日本とまったく違うことを実感しました。英産業連盟(CBI)とは、日本共産党として初めての出会いでした。日本でいえば財界の総本山、日本経団連にあたるところですから、そのビルに足を踏み入れるということで緊張して行きました。

 対応したマシュー・ファロー課長に、CBIが出した「気候変動」というパンフレットの日本語版を示しながら、「たいへん興味深く読みました」というと、一気にほぐれて「注目してくれてうれしい」と話が弾み、調査団の成果への期待が寄せられました。

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(写真)EU環境総局の担当者(右側)と懇談する党調査団。左から3人目が笠井氏=3月19日、ブリュッセル(岡崎衆史撮影)

 懇談では、「ビジネスと進歩のための好機であり、経済成長と排出削減は両立できる」、「気候変動問題の解決には産業界の果たす役割が決定的だ」という話を聞きました。財界そのものの姿勢として「社会的責任から必ずやる」と、むしろ対策をたてる中心になっていると受け止めました。

 ドイツでも、産業界には、「うまくいくかどうか疑問がある」という声がある一方、「決められたことは必ずやる」と社会的責任を果たす姿勢を明確にしていました。

 政府の側も、中期目標実現のため、環境に配慮した産業づくりをすすめつつ、「短期ではなく長期的な利益を追求する考え方が社会に広がっている。十五年前から経済が成長しても温室効果ガス排出増加と結びつかない状況が起きている」、「産業界の自主的なとりくみに任せているだけでは不十分であり、政治主導の拘束力ある措置が不可欠だ」としていました。

 総じて欧州では、IPCC報告や「スターン報告」に依拠し、いまの体制のもとで地球環境の不可逆的な破壊を回避する最大限の努力を払おうとしています。EUの基本文書では「新しい産業革命」と位置づけている。

 ところが日本では、結果としてできなくても仕方がないというのが政府の立場で、日本経団連の反対で中期の削減目標もまだ決められないでいる。そんな目先の利益優先で、「あとは野となれ山となれ」という態度とは対照的であることを痛感しました。(つづく)


団長 笠井  亮・衆院議員

団員 岡崎 衆史・「しんぶん赤旗」ロンドン特派員

栫  浩一・国会議員団事務局(笠井亮議員秘書)

小島 良一・党国際局員

坂口  明・「しんぶん赤旗」政治部記者

佐々木勝吉・国会議員団事務局(市田忠義参院議員秘書)

佐藤  洋・党政策委員

田代 忠利・党国際局次長


調査団の主な訪問日程

3月10日 ベルリン、独環境・自然保護・原子力安全省/独外務省

11日 独連邦議会/独経済技術省

13日 独南部バイエルン州ミュンヘン市郊外のザウアーラッハ市/ミュンヘンのバイエルン州政府農林省

14─15日 フライブルク

17日 ロンドン、英議会/英環境・食糧・農村地域省

18日 英産業連盟/欧州排出権取引所

19日 ブリュッセル、欧州委員会環境総局

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