2008年4月9日(水)「しんぶん赤旗」

主張

NATO首脳会議

軍事同盟に未来はない


 ブカレストで開かれた北大西洋条約機構(NATO)首脳会議は三日、アフガニスタン問題での「戦略的ビジョン」を採択し、アフガンへの「長期的な関与」を確認しました。NATO主導の国際治安支援部隊(ISAF)が四万一千七百人の兵力を展開、米軍と一体で活動しているものの、アフガン情勢は悪化しており、問題の長期化が避けられないとの見通しを確認したものです。

 いっそうの軍事負担を求める米国と加盟諸国との矛盾は大きく、分担問題で暗礁に乗り上げる事態こそ回避したものの、首脳会議はNATOの直面する危機を浮き彫りにしました。

増派は限定的

 アフガンでは、ISAFによる掃討作戦にもかかわらず、国際テロ組織アルカイダを率いるビンラディンを捕らえることができないばかりか、治安状況が悪化しています。「兵力不足」を前にして、米国は各国に増派を要請してきました。

 しかし、派兵する各国とも国内に反対世論を抱え、重い軍事負担に悩まされています。情勢悪化が著しい南部地域を担当するカナダは、他国が増派しなければ撤退するとまで主張していました。フランスが首脳会議直前に一個大隊(七百人規模)の増派を表明したことから、カナダの要求は満たされた形となったものの、確認された増派は米英を中心にして、限られたものにとどまっています。アフガン情勢を抜本的に変えるための有効な戦略を打ち出せないなかで、各国は派兵の長期化と犠牲の拡大に直面しています。

 旧ソ連を仮想敵とした米国中心の軍事同盟は多くが解体され、NATOもその存在意義が根本から問い直されています。イラク戦争に際しては、NATOはフランスやドイツなど主要国が反対に回って分裂状態に陥り、二〇〇五年にシュレーダー独首相(当時)は、「NATOは戦略上の協議の場ではもはやない」と指摘しています。

 アフガン問題でも、派兵に消極的なNATO加盟国をゲーツ米国防長官が「第二列」と非難するなど、NATO内部に亀裂が広がっています。アフガン問題にはNATOの未来がかかっていると指摘され、ブッシュ米大統領も二日、アルカイダの打倒が「NATOの最優先課題」だと強調したにもかかわらず、ISAFへの増派が限定的となったことは、亀裂を改めて裏づけました。

 アフガン問題は軍事力で解決できないことが明白であり、それが軍事同盟であるNATOに矛盾を引き起こしているのです。

軍事では解決しない

 米シンクタンク「アトランティック・カウンシル」が一月に出した報告は、「軍事的手段で(旧政権の)タリバンを一掃することはできない」と言明しています。そのうえで、民生分野での努力の必要を強調するとともに、中ロなどが加盟する「上海協力機構」やインド、イラン、パキスタンなどによる地域的共同と国連の役割が不可欠だと、平和的・外交的努力の必要を指摘しています。

 イギリスのデズ・ブラウン国防相も、ISAFの中心部隊としてタリバン掃討を進めているにもかかわらず、タリバンとの交渉が不可欠になっていることを認めています。

 首脳会議でクロアチアとアルバニアの加盟が承認され、「東方拡大」が進んだことから、NATOの存在感が強まったかのような論調が出ています。しかし、アフガン問題に表れたNATOの実情は、軍事同盟に未来のないことを示しています。


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