2008年3月31日(月)「しんぶん赤旗」

主張

派遣労働

雇用問題の潮目が変わった


 キヤノンやいすゞ自動車など大企業各社が、製造現場から派遣労働を解消する方針をあいついで発表しています。注目すべき方向転換であり、大きな意味をもつ変化です。

雇用戦略の行き詰まり

 財界は一九九〇年代半ばから、正社員をリストラし、安上がりで使い捨てできる派遣や請負に切り替える政策を実行してきました。派遣労働についていえば、限定していた業種を原則自由化(九九年)し、禁止されていた製造業を解禁(二〇〇三年)するなど、政府を動かして規制緩和をはかり、本格的な拡大をすすめてきました。

 しかも、これだけでは満足できずに、政府の規制改革会議や経済財政諮問会議、労働政策審議会の場で、さらなる規制緩和を要求してきました。派遣労働者を継続して雇用するさいに直接雇用を申し込む義務の撤廃、派遣期間や業種の限定の撤廃など、一切の制限を取り払って完全自由化しようという主張です。派遣と請負を厳密に区別した厚労省告示を見直して偽装請負の合法化も要求しています。財界は、これらを二、三年のうちにやりとげようと攻勢をかけていたことは周知のことです。

 ところが、いまこの流れがすっかり変わっています。はっきりいえるのは、財界の雇用戦略が行き詰まったということです。違法派遣、偽装請負など脱法行為のあいつぐ発覚と世論の批判、人間を使い捨てるひどい現状を変えようと声をあげた労働者のたたかいの高揚、そして新聞、テレビも注目してとりあげるようになりました。政府の動きも、厚生労働省が派遣労働の規制緩和に消極的な姿勢を見せるようになりました。

 なによりも福田首相が「(非正規雇用の増加は)決して好ましくない」と国会で言明(二月八日、日本共産党の志位和夫委員長への答弁)したことがもつ意味は大きいものがあります。これまでのように思い通りに政府を動かして目的を達成しようという財界のねらいは見通しがたたなくなっています。

 国会では、労働者保護の立場で労働者派遣法を改正しようという機運が高まっています。派遣法の改悪に一貫して反対し、労働者保護法への改正を主張してきた政党は日本共産党しかありませんでしたが、民主党、社民党、国民新党の野党各党がそろって今国会での法改正を打ち出しました。与党も公明党が今国会での改正をいいだしました。

 財界の思惑はすっかり狂って、いまや四面楚歌(そか)といってもいいすぎでない状態になっています。まさに派遣・請負拡大路線の破たんです。御手洗冨士夫日本経団連会長がトップにいるキヤノンが、派遣を期間工に切り替える措置をとることになったのは、その象徴といえます。

新しい流れに確信もち

 派遣を期間工に切り替えたといっても、非正規雇用に変わりはないという問題はあります。あくまでも非正規雇用にこだわり、正社員化に背を向ける大企業の姿勢に対して、さらに厳しい批判の声をあげていく必要があります。

 同時に、期間工は、派遣のようなだれが雇用主かわからない間接雇用ではなく、雇用責任が明確な直接雇用です。ごく一部の枠とはいえ正社員採用の道が開かれたという前進面があることも見ておきたい点です。

 潮目が変わった。声をあげれば変えられる―この新しい流れに確信をもって、労働者派遣法の抜本的改正、正社員化をめざす運動のうねりをつくりだすことがいま重要です。


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