2008年3月23日(日)「しんぶん赤旗」

氷河溶解で食料危機

水不足が生産直撃

米の専門家が警告


 【ワシントン=鎌塚由美】米国のシンクタンク、地球政策研究所のレスター・ブラウン所長は二十日、記者会見し、ヒマラヤ山脈やチベット・青海高原の氷河の溶解は、世界規模の食料危機につながる可能性があることを警告、温室効果ガス削減の努力の緊急性を強調しました。


 ブラウン所長は、地球温暖化の影響で、インドのガンジス川や中国の黄河、長江の水源となるヒマラヤやチベットの氷河が完全に融解した場合、これらの河川は乾期に水の流れない「季節的河川」になると指摘。世界でも有数の米と小麦の生産地であるこれらの流域は、河川によるかんがいに大きく依存していることから、水不足は穀物生産を「直撃」することになると語りました。

世界中に影響

 インドでは、五歳未満の子どもの40%以上が「低体重で栄養不足」の状態にあることから、いっそうの食料不足によって「飢餓が広がり、幼児死亡率が上昇する」ことになると指摘。中国では、「食料価格上昇の抑制に取り組んでいる」が、「食料不足に伴い社会的動揺が拡大する」可能性もあると述べました。

 ブラウン氏は、現在、世界的に穀物価格上昇が史上最高を記録するなか、「その緩和策が取られていない」と述べ、同地域での「生産の途絶は、そこに住む人々だけでなく、世界中の消費者にも影響する」と指摘しました。

地下水が枯渇

 これらの地域では「すでに地下水の枯渇が進行中」だといいます。食料危機の可能性は「理論上の予測ではなく、すでに起きはじめていることを基にしている」と語りました。

 同氏は、「文明を脅かすシナリオを回避するためには旧来通りのエネルギー政策を転換する必要がある」と強調。「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)報告が述べている「二〇五〇年までに一九九〇年比で80%の温室効果ガス削減」の緊急性を訴えました。

主要な氷河の溶解と食料安保

(地球政策研究所による)

ガンゴトリ氷河(インド・ヒマラヤ山系) ガンジス川の水の約70%を供給。20年前の倍近い年35メートルの速度で後退している。消失するとガンジス川は乾期には水の流れない季節河川になる。ガンジス流域には4億700万人が住み、インドの穀物栽培地の40%をかんがいしている。
チベット氷河群(中国・チベット青海高原) 長江、黄河、ブラマプトラ川の水源。溶解速度は加速しており、2060年までに3分の2が消失する可能性がある。中国の稲栽培の半分が長江に依存している。
カラコルム、パミール、天山氷河群(中央アジア) 中央アジアの山岳部の氷河はインダス川、アムダリヤ川の水の70%以上を供給。氷河の面積は1930年以来35−50%減少。小規模の氷河数百はすでに消失。インダス川流域にはパキスタンの人口の4分の3以上が住んでおり、同国の穀物栽培地の80%をかんがいしており、パキスタンの食料、水の安全保障に死活的に重要。


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