2008年3月23日(日)「しんぶん赤旗」

石原知事への不信深まる

経営破たん 新銀行東京

400億円増資は背信


 東京都議会で、経営破たんした新銀行東京への400億円追加出資の審議が大詰めを迎えています。25日は予算特別委員会でのしめくくり総括質疑のヤマ場になります。放漫経営の実態が次々と明らかになり、詳細な説明を拒み続ける石原知事と新銀行経営陣への不信は深まるばかりです。(岡部裕三)


 新銀行は、三月期決算で累積赤字が千十六億円にふくらむ見通しで、東京都が出資した一千億円をドブに捨てたも同然の事態となっています。

 大赤字の原因の一つが、融資の失敗です。

 日本共産党の追及で、石原都政が作成した新銀行マスタープランは、開業三年目に黒字にするため九千三百億円にする過大な融資目標をたて、新銀行経営陣をあおり、融資の焦げ付きを増やす結果となったことが浮かび上がりました。

 融資以外では、新銀行が購入した国債など有価証券の損失があります。今年三月末で四十億円にのぼる見通しです。

 百二十四億円かけたコンピューターのソフトウエアもむだになり、〇七年三月期決算で八十三億円を減損処理し、特別損失に計上しました。

 開発経費と維持費で十二億円かけてATM(現金自動預け払い機)を百五十一台設置しましたが、経営悪化で店舗外の百二十六台の稼働を中止、撤去を進めています。

 電話で顧客の相談に応じるコールセンターも、利用客が少なく撤収。業務委託費とビル賃借料で二億円をかけました。

6ページの再建計画

 追加出資を前提にした新銀行の再建計画も粗末です。再建計画書は表紙を含めてたった六ページ。

 日本共産党は新銀行が作成した経営破たんの調査報告書全文の提出、四百億円の根拠、再建計画の収支見通し、貸付・預金の想定利率など詳しい説明を求めました。

 これに対し、石原知事は経営破たんの原因を「われわれが期待し、委嘱した経営陣の問題だ」と旧経営陣に責任を転嫁し、調査報告書全文の提出も拒否。都産業労働局も「銀行側が明らかにしていない」といって詳しい説明を拒否したまま。

 この答弁に、日本共産党は「これでは白紙委任しろということではないか。そんな無責任な説明で追加出資を求めても、都民は納得しない」と厳しく批判しました。

提案自体に問題

 石原知事が追加出資を提案したこと自体、大きな問題があります。

 もともと東京都は新銀行マスタープランで、同行の出資金は都一千億円、民間は当初の五百億円から最終的に一千億円に増やし、都の出資比率を五割に抑える計画でした。しかし、当初から民間出資がうまくいかず、都出資分のほとんどを失うことになるとの疑問がだされていたのです。

 これに対し、同行の代表執行役に天下りした津島隆一氏は、都の新銀行設立本部長時代に、民間出資について、「十分な見通しをもってやっている」(〇四年九月)、「民間企業五十社程度の資本参加を含む五百億円を超える自己資本調達の見通しがつき」(〇五年三月)と答弁していました。

 実際は、開業後三年たっても民間の出資は百八十七億円にとどまっています。

高まる反対世論

 また、石原知事は民間に追加出資を求めることもせず、新銀行取締役会の要請を受けた日に、わずか半日足らずで追加出資を決めるという、ずさんな審査・決定の経緯も日本共産党の追及で判明しました。

 都の追加出資は、民間出資分の穴埋めとして行われることになり、都民への背信行為です。

 石原知事が新銀行を設立した目的は、中小企業融資でした。しかし、同行の中小企業融資比率は昨年九月には47・2%に低下。再建計画では、主力商品の無担保無保証融資を事実上廃止するなど、中小企業融資から大幅撤退の方針です。設立目的を放棄した新銀行への追加出資は、破たんを先送りするだけです。

 不誠実な石原知事と新銀行経営陣に、都民の批判は高まるばかりです。東京都に寄せられた意見は十九日までに八百六十八件に増え、反対が84・8%と圧倒的です。

 都の幹部も「四百億円を追加出資しても、再建できない」「都の負担がさらにふえる可能性もある」と指摘します。


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