2008年3月2日(日)「しんぶん赤旗」
主張
予算案衆院強行
論戦から逃げる数の横暴だ
自公両与党が、「徹底した審議」を求めた衆参両院議長のあっせんを踏みにじり、来年度予算案と税制法案を衆院で強行可決しました。
高速道路を造り続ける道路特定財源、軍事優先と情報の隠ぺい体質が浮き彫りになったイージス艦衝突事故、貧困と格差を広げる「逆立ち」した税制と財政、働く貧困層をまん延させた派遣法―。
いずれの問題も本格審議はこれからという段階で審議を打ち切り、強引に採決した自民党、公明党に厳しく抗議します。
本末転倒の政府案
審議をすればするほど、これら国政の根幹にかかわる重大問題で自公政治のゆきづまりが明白になっています。強行採決は、政府・与党にとって不都合な論戦を回避するための姑息(こそく)な数の横暴にほかなりません。
額賀福志郎財務相は「予算の年度内成立を図ることが経済の安定につながる」と主張しています。しかし、政府予算案と税制法案は、高速道路や軍事費を聖域にし、大企業・大資産家を優遇する一方で、暮らしと社会保障には冷酷です。いま日本経済の安定に切実に求められているのは家計の不安と危機を打開することであり、本末転倒の政府案は根本から組み替える必要があります。
いかに政府案が「逆立ち」しているかを絵に描いたように示しているのが、道路特定財源と五十九兆円の道路中期計画です。福田内閣が、一般財源化をほごにし、ガソリン税などの「暫定税率」延長の口実にしている中期計画の無謀、ずさんな内容が次々と明るみに出ています。
中期計画の四割を占める高速道路の事業量・二十四兆円は、今年度の大型道路予算を十倍しただけ。中期計画は二十年前の一万四千キロの高速道路計画を復活させ、そのうえ七千キロの地域の大型道路も組み込んでいます。ほかにも東京湾アクアラインの外側にもう一本の横断道路を建設するなど、六本の巨大横断道路の計画まであり、その調査費としてすでに六十八億円を計上しています。
ここまでの論戦で、政府・与党が特定財源と暫定税率に固執するのは、税金を無駄な大型道路にそそぐ打ち出の小づちを温存したいからだということが鮮明になっています。
他方で福田内閣は四月から、七十五歳以上の高齢者に負担増や保険医療の制限を迫る後期高齢者医療制度を、一部の一時的凍結でお茶を濁して強行しようとしています。社会保障の自然増を毎年二千二百億円も削る方針を来年度も続け、生活保護の母子加算をカットするなど、人間らしい暮らしを脅かす政治です。
大型道路を何より優先する道路特定財源と「暫定税率」を死守し、対照的に庶民の生活が必要としている社会保障を削る政府案は、向いている方向がまったくさかさまです。福田内閣と与党が、いくら「生活者重視」と強調しても、暮らしに冷たい実態を隠すことはできません。
参院での徹底審議を
「社会保障の方が重要だ」「社会保障の方が緊急性、重要性が高い」「余裕のない社会保障を削って、余裕のある道路を生かすのはあべこべだ」。二月二十六日、衆院の財務金融委員会に出席した四人の参考人は、日本共産党の佐々木憲昭議員の質問に対して、自民・公明の与党推薦者も含めて全員が社会保障を優先すべきだと答えました。
経済政策の軸足をどこに置くか、経済・財政政策の根本が問われています。予算案と税制法案の参院での徹底審議を求めます。