2008年2月28日(木)「しんぶん赤旗」

主張

クラスター爆弾

禁止条約の変質策動をやめよ


 ニュージーランドのウェリントンで開かれていたクラスター爆弾禁止国際会議は、今年末までのクラスター爆弾禁止条約締結を確認した宣言を発表して二十二日終了しました。

 ウェリントン会議には百二十二カ国が参加し、そのうち八十二カ国が宣言に署名しました。署名国はこんご増加する見通しです。

 問題は、宣言署名によって五月のダブリン(アイルランド)会議への参加資格を得た、日本などクラスター爆弾容認諸国の動きです。国際社会が熱望する全面禁止の流れに水をさし、クラスター爆弾を容認させることをめざしています。

温存ねらう修正提案

 ウェリントン会議の宣言は、クラスター爆弾の「使用、製造、移転、貯蔵の禁止」が禁止条約の不可欠の要素だと明記しました。ダブリン会議では、この内容の禁止条約案が採択されることになります。昨年二月から始まったクラスター爆弾全面禁止にむけた「オスロ・プロセス」の確かな進展を示すものです。

 日本政府がこの宣言にいち早く署名したのは、宣言に署名しないと五月のダブリン会議に招待されないからです。宣言の署名によって、クラスター爆弾の禁止に後ろ向きだという国際批判をかわすねらいもあります。しかし、見過ごせないのは、ダブリン会議に参加してクラスター爆弾を存続させる政府方針です。

 日本政府は、ウェリントン会議で全面禁止条約の素案に対する修正案を提出しました。その内容はひどいものです。「人道上の懸念と安全保障上の必要性との間のバランスをとる」ことを求め、不発弾として地上に残っても爆発する割合が小さい、「信頼性・正確性」の「高い」ものを認めています。アメリカなどの「改良型」を認めるというのです。

 しかも、アメリカなどが侵略のさいに多用している現在の「信頼性・正確性の低いクラスター爆弾」についても、生産、開発、移転は禁止するといいながら、使用は「改良型」ができるまでは認めるといっています。日本政府の修正提案は、クラスター爆弾の全面禁止要求とそのための条約づくりに背を向けるものであるのはあきらかです。

 政府はこの修正提案に沿って、「次回の会議で条約の内容についてきちんと議論する」といっています(中根猛軍縮不拡散・科学部長)。条約案を確定する大事な五月のダブリン会議で、クラスター爆弾を容認する条約づくりをめざす姿勢をあきらかにしたものです。

 この一年の間に、四回の国際会議と三回の地域会議を開き「オスロ・プロセス」は大きく進展しました。ダブリン会議は全面禁止条約づくりを結実させるための大事な詰めの会議です。その会議で全面禁止の努力をだいなしにする日本政府の態度は、国際社会の批判にさらされ、孤立することは避けられません。

有害な「バランス論」

 日本政府は、安全保障上の必要性とともに人道上の懸念への配慮を強調します。しかしこの二つは両立しません。はじめから人を殺し傷つけるように設計されているのがクラスター爆弾です。人道的配慮ができるようにいうこと自体間違いです。

 クラスター爆弾の実際の使われ方は、アメリカがイラクなどで多用していることで明白なように侵略のためです。世界で十万人以上を犠牲にしている国際人道法違反の残虐兵器をなくすのは当然です。日本政府は、クラスター爆弾全面禁止の国際的願いにそうべきです。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp