2008年2月18日(月)「しんぶん赤旗」

主張

消費低迷

家計の応援に軸足の転換を


 “大企業が競争力を強めれば、やがて利益が家計にもしたたり落ちて国民が潤う”という、政府の「シナリオ」がゆきづまっています。

 昨年十―十二月のGDP(国内総生産)速報によると、企業の輸出と設備投資は、いずれも実質12・1%増と好調です。しかし、雇用者報酬は前期から連続で伸び率ゼロ、家計消費は0・8%増にとどまり、依然として低迷が続いています。

成長「シナリオ」の頓挫

 十億円以上の資本金を持つ大企業が五年連続で増益、四年連続で過去最高益を更新しています。昨年度の経常利益は、バブル期の最高益の一・七倍にも達するほどです。

 政府の言うとおりなら、とっくの昔に家計に波及しているはずです。ところが実際には、昨年の一人当たり賃金はマイナスに転落、雇用者報酬の総額は十年前の一九九七年と比べて十五・六兆円も減少しました。

 とうとう政府の月例経済報告も、企業の好調が「家計部門へ波及」するという「見込み」を、昨年十二月から削除せざるを得なくなっています。大田弘子経済財政相は今国会の経済演説で、「この間に、企業の体質は格段に強化」されたものの「賃金上昇に結び付かず、家計への波及が遅れている」と認めています。

 国内経済を安定した発展軌道に乗せるには、企業が生み出したモノやサービスを消費する家計の元気の回復が不可欠です。〇七年版「経済白書」も、企業部門の好調が「家計所得の増加へと波及すれば景気の持続力が維持される」とのべています。

 言い換えれば「家計への波及」は政府の成長シナリオを成立させる絶対条件です。それを口にできなくなったことは、成長シナリオそのものが頓挫したことを示すものです。

 大田経財相は「もはや日本は『経済は一流』と呼ばれるような状況ではなくなった」とのべました。大田氏が問題にしているのは日本の一人当たりGDPの順位が下がったことにすぎず、「改革の続行」による成長力の強化を訴えています。うまくいかないのは「構造改革」が足りないからだという従来路線の延長では、同じ失敗を繰り返すだけです。

 GDPが大きいから一流という発想は時代遅れです。国の経済の最大の目的は国民のくらしを支えることにあります。それができずに貧困をまん延させる経済は、いくら規模が大きくても一流であるはずがありません。

 財界と政府・与党が進めた「構造改革」は大企業の目先の競争力を強めるために派遣労働を自由化し、労働分配率を急降下させてきました。

 日本共産党の志位和夫委員長が衆院予算委員会でとりあげたように、キヤノンの大分工場や滋賀・長浜工場では、労働者の半分以上が派遣・請負です。労働者を犠牲にして、働く貧困層「ワーキングプア」を増大させることで、キヤノンは過去最高の利益をあげています。

逆立ち政治切りかえて

 こんなやり方が破壊したのは雇用と賃金だけではありません。日本経済の最大の財産である勤労・勤勉な労働者を痛めつけ、職業能力を高める機会を奪い、技術の継承を妨げていることです。

 社会保障の切り捨て、大企業に減税する一方で庶民に増税する政治が貧困に追い打ちをかけています。頓挫したのは、国民を犠牲にして大企業を応援する逆立ちした経済政策、「構造改革」にほかなりません。

 軸足の置き所が間違っています。大企業から家計・国民に、経済政策の軸足を大胆に転換するときです。


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