2008年2月17日(日)「しんぶん赤旗」

沖縄少女暴行事件

基地外米兵 把握できず

地位協定 外国人登録を免除


 十日に発生した沖縄・女子中学生暴行事件の加害米兵が基地外に居住し自宅に被害者を連れ込んだりしたことから、基地外に居住する米兵の対策が焦点になってきました。高村正彦外相は十五日の定例会見で、基地外に居住する米兵の犯罪防止策に言及しましたが、米兵・軍属の外国人登録を免除する日米地位協定(別項)の特権的条項が障害になっています。(竹下岳)


防犯対策に苦慮

 在日米軍は基地内に居住する米兵の夜間外出を制限する「リバティ・カード」制度などを設けていますが、基地外に住む米兵・軍属や家族は野放しです。

 二〇〇七年七月に神奈川・横須賀市内で発生した米兵による女性傷害事件も加害米兵の賃貸アパートで発生しました。

 しかし、政府や自治体は基地外に居住する米兵の人数や居住地などの実態をつかんでいません。米軍関係者は、日米地位協定で、外国人登録法に基づく住民登録を免除されているからです。

 米軍基地を抱える自治体が基地外に居住する米兵の数を米側に照会しても、ほとんどの場合は地位協定をたてに、公表を拒否されています。このため自治体は防犯対策に苦慮しています。

 政府も「実態を十分に把握していない」(岸田文雄沖縄・北方担当相、十五日)のが実情です。

米兵18%が外に

 米軍準機関紙「星条旗」によると、基地外に住む米兵の数は〇六年で八千五百九十五人。在日米軍の兵力約四万八千人の約18%にあたります。軍属や家族を加えると、これを大きく上回ります。

 沖縄県はこのほど、在日米軍沖縄調整事務所から提供された情報として、県内で米軍用に登録された住宅が六千九十八件、契約済みが五千百七件だと公表しました。ただ、各軍の比率や市町村ごとの分布状況などは分かりません。

 本土でも同じような状態です。在日米海軍司令部が〇三年九月、神奈川県内の米海軍用賃貸住宅は二千八百十六戸だと公表したのが、最近では唯一の数字です。

 〇六年六月、青森県つがる市の航空自衛隊車力基地に米軍Xバンドレーダーが配備されたのに伴い、約百人の米兵・軍属が配備されました。米空軍三沢基地が青森県三沢市内の業者と契約して、つがる市内に民間軍事会社の警備員用のプレハブ住宅を建設しましたが、これについても市当局は実態をつかむことができません。

 今回の事件で米兵が女子中学生と最初に接触したのは沖縄市の繁華街でした。同市は十五日、沖縄防衛局に対して、基地外に居住する米軍関係者に関する情報を提供するよう要請しました。

 沖縄県北谷町では町職員が一軒一軒を歩き、全世帯の約15%にあたる約千二百世帯が米軍関係だとの推計を出しました。

地位協定見直せ

 政府は「今回の事件で地位協定の問題は生じない」として、見直しを否定しています。しかし、パスポートもビザもなしに入国し、外国人登録も免除されるという特権が今回の事件の背景にあります。この点だけからも、地位協定の見直しは不可欠です。


在日米軍用の住宅

2割が基地外賃貸

 在日米軍用の住宅は基地内の官舎と基地外の民間賃貸住宅に区分され、両者の比率は四対一とされています。

 日本政府は、米軍「思いやり予算」で基地内に住宅を提供していますが、基地外の住宅の場合、米軍当局が直接、業者と契約を結びます。基地外に居住する米兵・軍属には、「海外居住手当」(OHA)という制度に基づき米政府が家賃の大部分を補助します。

 住宅不足に悩む在日米海軍は、米軍がアパートなどを一括して借り上げて米軍専用住宅にする「賃貸住宅提携プログラム」を進めています。長崎県佐世保市の場合、すでに家族用五棟、独身用一棟が建設済みで、「事実上の米軍基地」との指摘も出ています。


 日米地位協定 一九六〇年の現行日米安保条約発効に伴い、米軍のさまざまな特権を定めた協定。米兵が犯罪を起こしても、公務中であれば第一次裁判権は米側にあるため、事件・事故が起こるたびに改定要求が出ています。今回の事件に関連するのは同協定第九条2項で、「合衆国軍隊の構成員は…外国人の登録及び管理に関する日本国の法令の適用から除外される」となっています。



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