2008年2月8日(金)「しんぶん赤旗」

主張

新テロ法交換公文

転用防止の保障にならない


 政府は、インド洋で自衛隊が米軍艦船などに給油支援をおこなうための新テロ対策特別措置法にもとづいて、アメリカ、イギリス、フランス、パキスタン四カ国と給油実施についての交換公文を結びました。

 旧テロ法にもとづいて自衛隊が米艦船に供与した油がイラク戦争に流用されていた問題は、いまだに解決していません。政府は国会できびしく追及されたこともあって転用防止を口にはしたものの、結ばれた交換公文では転用防止の保障にならないことが明白になりました。

拒否された検証措置

 交換公文は、「テロ対策海上阻止活動」をおこなう艦船に自衛隊が給油・給水をすると書いています。しかしこれで、海上阻止活動のために給油を受けた艦船がイラクなど他の戦争や軍事作戦で活動するのを禁じているというのは無理な話です。

 インド洋で活動している米艦船は、アフガニスタン作戦やイラク作戦など複数の任務を合わせ持っています。海上阻止活動をしながら、強襲揚陸艦「イオウジマ」搭載の攻撃機がアフガニスタン領土を爆撃したような作戦をおこなうのは米軍では当たり前のことです。イラク領土への攻撃も必要があれば実施してきました。交換公文を結んだからといって日本政府が米艦船の行動を制約できるはずはありません。

 福田政権はそれを知っているからこそ、給油支援をおこなうさい、テロ対策海上阻止活動の任務にあたっている限り、米艦船がアフガニスタン作戦以外の軍事作戦に従事していたかどうかというのは「問題にはならない」(町村信孝官房長官 昨年十月三十一日衆院テロ特別委員会)といっているのです。

 見過ごせないのは、アメリカとの交換公文を結ぶ交渉のなかであきらかになったアメリカの横暴と日本の卑屈な姿勢です。日本政府は、日本から受けた油の使途について検証する措置を盛り込むことを要求しました。アメリカが法律に反して他に転用することを防止するためです。

 ところがアメリカは、転用疑惑について日本政府から事実照会を受け日米外交問題にまで発展したことでよく知っているはずなのに、作戦行動に影響を及ぼすなどといって、「決して受け入れられない」と拒絶したのです。そればかりか、転用防止措置を求めるなら日本の給油は「受けない」とまでいったと伝えられています。日本の事情などまったく無視したごう慢な態度です。

 アメリカがここまで転用防止措置の明記を拒むのは転用をこんごも続ける意図があるからです。日本政府が結局、アメリカいいなりに、旧交換公文とほとんど変わらない内容を認めたのはきわめて重大です。どんな作戦にも日本の油を転用できるような態度を維持し続け、アメリカのアフガニスタン「報復戦争」やイラク戦争への軍事貢献をつよめることを、政府はやめるべきです。

外交的役割への転換を

 戦争でテロをなくせないことは七年にわたるアフガニスタン「報復戦争」が証明しています。アフガニスタンでは政府、議会のレベルで、テロと関係のない反政府武装勢力タリバンとの和平交渉の動きをつよめています。イギリスでさえタリバンと和平のための会談を重ねています。国際社会は、軍事作戦ではなく、話し合いによる和平の動きを後押しすることが急務です。

 日本政府は戦争の後押しをやめ、和平実現に向けた外交的・平和的役割を果たすべきです。


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