2008年1月30日(水)「しんぶん赤旗」

主張

米一般教書演説

無法な戦争始めた責任消えぬ


 ブッシュ米大統領は二十八日夜(現地時間)、大統領として最後の一般教書演説をおこないました。

 外交政策ではイラク問題に多くの時間を割き、昨年実施した米軍三万人の「増派のおかげでりっぱに成果が上がっている」と自賛したことが特徴です。二万人の兵士の削減を示しながらも、イラク国内や国際社会から求められている米軍撤退については、「早く撤退すれば暴力がはびこる」と撤退要求を事実上拒絶しました。十四万人以上もの米軍を駐留させ、軍事作戦を続けるのでは、イラク人の反発をやわらげることも、イラク情勢を改善させることもできないのは目にみえています。

市民殺傷の現実

 ブッシュ大統領がイラク侵略を命令してからこの三月で五年をむかえます。侵略の口実にした大量破壊兵器はイラクから発見できず、この戦争がまったく無法な戦争だったことがあきらかです。アメリカの政府高官の発言を調査している「センター・フォー・パブリック・インテグリティー」は、ブッシュ大統領が二百六十回、政府高官全体では九百三十五回もうそ発言をしていると発表しました。何度もうそをついて無法な戦争に導いたのに、ブッシュ大統領がだんまりをきめたのは国際社会をばかにするものです。

 ブッシュ大統領は、市民の死亡も減った、宗派間抗争も減ったなどといっていますが、これはイラクの表層しかみない議論です。なるほど十六万人にもおよぶ大軍による武力制圧で米軍などへの表立った反抗は減っているようにみえます。しかし、その奥でイラクの人々は恨みを大きくしているのは確実です。爆撃などで多くの民間人が殺傷され続けているからです。

 米紙ワシントン・ポスト紙十七日付は、米軍主導の多国籍軍がおこなっている空爆が、二〇〇七年は前年の六倍に達したと伝えました。一週間に四回の割合で合計二百二十九回だった爆撃が、〇七年には、一日四回の割合で合計千四百四十七回になっているのです。十日にはバグダッド南東部のアラブ・ジャブルの農村地帯に、B1戦略爆撃機二機と戦闘爆撃機が三十八発もの爆弾を投下し、多くの民間人を犠牲にしました。

 国連イラク支援団によると、こうした空爆で、昨年四月から年末までの九カ月間でイラク国民の二百人以上が犠牲になっています。ブッシュ大統領が引き起こした戦争以来、米軍の武力攻撃や抵抗する側の爆弾攻撃などで犠牲になったイラク人の数は「百二十万人」(イギリスの世論調査機関「オピニオン・リサーチ・ビジネス」の昨年九月の調査結果)ともいわれています。イラク国民がブッシュ政権への反発を強め、米軍の撤退を求めているのは当然です。

撤退の道に踏み出せ

 国際社会の撤退要求は大きくなるばかりです。スペイン、イタリアが多国籍軍から撤退したあとも、アメリカの盟友のイギリスが部隊を削減し、オーストラリアも撤退方針をあきらかにしています。アメリカ国内でも七割近くの国民がイラク戦争の不支持を表明しています。

 イラク侵略に突き進んだブッシュ大統領のやり方は、戦争を禁止し、紛争を外交的・平和的に解決するという国連憲章の枠組みをだいなしにするものです。ブッシュ大統領がイラク侵略とその後の軍事支配政策の誤りを認め、全面撤退の道に踏み出すことが不可欠です。そうしてこそイラク国民と国際社会の声にこたえ、平和を実現することができます。


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