2008年1月24日(木)「しんぶん赤旗」

続消費税なぜなぜ問答

社会保障の財源を考える(3)

Q 大企業が海外に逃げてしまう?


 「大企業にこれ以上の負担を求めると、国際競争力が落ち、海外に逃げてしまうのでは?」という質問が出されます。この点について、考えてみましょう。

 確かに、大企業が海外進出を進めているのは事実です。しかし、その主な理由は税金の問題ではありません。

 二〇〇七年九月に、経済産業省が実施した委託調査「公的負担と企業行動に関するアンケート調査」の中間結果が公表されました。経済産業省は、財界の意向を受けて法人課税の引き下げを要求しており、この調査も、減税の必要性を証明しようという意図に沿ったものであり、回答企業も主には大企業です。しかし、この調査結果でも、“税金をまけてやれば競争力が増す”などという単純な議論が成り立たないことが分かります。

 たとえば、海外進出を計画している企業に、その理由を聞いた設問に対する回答では、「労働コスト」「海外市場の将来性」などが上位で、「税負担」は五番目にすぎませんでした。

 また、海外進出している企業に「法人実効税率が30%程度まで引き下げられた場合、国内回帰を検討するか」との設問に対しては、「国内回帰を検討する」とした企業は17・8%にすぎず、大多数は「検討しない」と回答しています。

 さらに、「法人所得課税等の企業負担が重い」と回答した企業に対して「負担の引き下げが行われた場合のメリットは?」と聞いた設問には、「国際競争力の強化」という回答も半数程度ありましたが、圧倒的に多いのは「税引後利益の増大による企業価値や株価上昇」という回答でした。ここには、「税負担の軽減」を求める大企業の本音が表れています。

 いま、アメリカ流の「株主資本主義」「株価資本主義」の風潮が広がり、大企業の経営者の中に短期的な業績向上による株価上昇ばかりを追い求める傾向が強まっています。短期間で利益を増やす方法の一つはリストラによるコスト削減であり、もう一つは企業減税です。

 リストラによって短期的には利益が上昇しても、技術を持った労働者がいなくなってしまうことによって、将来の競争力が維持できるかが心配されています。本当に国際競争力を心配するのであれば、こうした問題にこそ目を向けるべきです。大企業のいいなりで減税をしても、短期的な株価上昇にはつながっても、国際競争力が向上する保障はありません。(つづく)

グラフ


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