2008年1月21日(月)「しんぶん赤旗」

主張

学習指導要領改定

国家統制はずし、条件整備を


 中央教育審議会が十七日、教科等の枠組みや時間数、その内容を定める学習指導要領の改定について答申しました。文部科学省は、これにもとづき二〇一一年から使う指導要領を三月までにつくる予定です。

 答申は、政財界の「学力低下」論に呼応して、子どもには授業時数をふやし全国いっせいテストで競わせ、教員には授業内容や方法の統制を強めようというものです。

学力観を画一化

 今でも金曜日にはくたくたで授業にならない小学校一年生が、改定指導要領では毎日五時間授業になります。教育内容は授業時数以上にふえ、つめこみ授業による「落ちこぼし」の増加は明らかです。いっせいテストは、点の低い子どもに「出来損ないっていわれている感じ」と劣等感をもたらします。

 答申は多様であるべき学力観や学習方法を画一化しようとしています。答申が重視する「表現力」は「A4一枚で書く」が目標です。表現したい気持ちをていねいにはぐくむのでなく、「A4一枚」が機械的に追求されかねません。個性的で創造的な授業が姿を消す危機です。

 三年連続「学力世界一」となったフィンランドは、日本より授業時数が短く、いっせいテストをやらず、教員の自由度を思い切り保障しています。答申はこうした世界の流れにも逆行するものです。

 さらに答申は、改悪された教育基本法をうけて、「伝統と文化を尊重する態度」「国と郷土を愛する態度」などの教育を授業全体でつよめようとしています。しかし、何をもって「伝統」や「愛国心」とするかは、良心の自由に属します。特定の態度を押しつけ子どもを鋳型にはめることは、憲法に反します。

 しかも答申のかかげる徳目には、市民道徳の教育に欠かせない、人権や子どもの権利がありません。子どもたちは、格差社会、いじめ、成績による選別などで、人間として傷ついています。その子どもの声をききとり、子どもとともに誰もが人権を尊重される学校生活をきずくことこそ、市民道徳の教育の核心です。

 上から観念的で画一的な「徳目」を守れと言うのは、既存の社会に従順にしたがう人間をつくろうというものです。

 答申は、前回の目玉として華々しく登場した「総合的な学習の時間」をへらし、中学の「選択教科」を事実上なくすなど、方針を大きくかえました。こうした朝令暮改にふりまわされる子どもや学校現場はたまったものではありません。

 戦後直後の学習指導要領は「試案」と銘打たれ、どんな授業をおこなうか教師自身で研究するための「手引き」であり完成品ではないとされていました。指導要領は大枠にとどめ、教える内容や時間は学校現場の創意工夫にゆだねるべきです。

 こうした自由のもとでこそ、助け合い学びあいながら「分かった」と瞳を輝かす授業、貧困や格差、環境問題など現代社会の課題とむきあう授業、そんな子どもたちが歓迎する授業がうまれます。

少人数学級でこそ

 政治が真剣にとりくむべきは、教育条件の整備です。豊かな知育には少人数学級が欠かせませんが、日本の学級編制は四十人のままで、二十人程度の欧米諸国にくらべて大きく立ち遅れています。

 授業への国家統制は強め、条件整備は放棄する―そんな自公政治を一刻も早く終わらせ、教育が花開く新しい政治を実現させましょう。



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