2008年1月19日(土)「しんぶん赤旗」

主張

首相施政方針

実も心もない「偽装」演説


 福田康夫首相が施政方針演説で内閣の基本方針をのべました。福田首相は「生活者・消費者が主役となる社会」を実現するため、「あらゆる制度を見直す」と強調しました。「国民本位」「国民の立場に立って」など、やたらと国民を「持ち上げる」言葉を散りばめています。

 国民が主人公だということは憲法に明記された政治の大原則です。それをあえて繰り返さなければならないことは、むしろ、自公政治が国民をどれほどないがしろにしてきたかを浮き彫りにしています。

痛みへの目線がない

 昨年の参院選で国民が下した与党大敗の審判を受けて、ようやくそのことに気が付いたのでしょうか。首相の演説を聞くと、まったく違うことが分かります。

 首相は内閣の課題として社会保障の維持、少子化、非正規雇用、地方経済の低迷への対応、地球環境やエネルギー問題などを挙げました。いずれも財界・大企業を優先し、アメリカに追従する自民党政治によって、欧州諸国などと比べて事態をはるかに深刻にしてきた問題です。それにもかかわらず、首相は「成熟した先進国として、今まで経験したことのないこれらの問題」と、降ってわいた災害のように語りました。

 みずからは責任も反省も、何も感じていないのではないでしょうか。

 いま国民が直面しているのは、制度改悪で医療や介護、生活保護など福祉から締め出され、社会保障にいのちとくらしを踏みにじられる本末転倒の政治です。身を粉にして働いても生活保護を下回る収入しか得られない貧困の広がりや、農業や商店街など地域経済の命綱の破壊です。

 首相の演説には、生活保護を削られた母子家庭、ネットカフェで寝泊まりせざるを得ない若者、過疎の村でふんばってお米をつくっても時間当たり二百五十円ほどにしかならない農家をはじめ、庶民の痛みへの目線がみじんもうかがえません。

 なにより、「生活者・消費者が主役」「国民が安心して生活できる社会保障」というなら、“財界・大企業が主役”“アメリカいいなり”の政治と決別する必要があります。

 少なくとも、違法な派遣労働の野放しや社会保障費の自然増を毎年二千二百億円も削減する「骨太方針」をやめなければ、当面の対応策も一時しのぎに終わります。最低限の政治的決断さえやる意思がないなら、生活者が主役、安心できる社会保障などただの「偽装」になってしまいます。

自民党政治の転換で

 見過ごせないのは、福田首相が社会保障の安定財源として、「消費税を含む税体系の抜本的改革」を早期に実現するとのべていることです。消費税の増税は、最悪の生活者・消費者いじめにほかなりません。

 基礎年金を全額消費税で賄えば年金給付で返ってくるから負担増ではないという議論もありますが、企業の保険料負担がなくなる分は国民に転嫁されます。税率が10%引き上げられた場合、月一万四千円余りの保険料を払う国民年金では家計消費が月十四万円余を超えたら負担増です。加えて中小業者は取引の上でも消費税を転嫁できずにいっそう苦しめられることになります。企業が保険料の半分を拠出している厚生年金は、ほぼ全員が負担増です。

 財源問題は大企業・大資産家への行きすぎた減税と五兆円の軍事費にメスを入れない限り解決できません。自民党政治が生み出した矛盾は、自民党政治を転換することではじめて切り開くことができます。


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