2008年1月17日(木)「しんぶん赤旗」

主張

クラスター爆弾

なぜ禁止条約作りを妨害する


 今年は、クラスター爆弾の全面禁止条約締結をめざす国際的とりくみにとって大きなヤマ場となります。

 昨年二月のオスロ(ノルウェー)会議がうちだした、今年末までの全面禁止条約締結に向けて、有志諸国を軸にした国際的とりくみは着実に前進しています。オスロ会議では四十九カ国だった参加国が、五月のリマ(ペルー)会議では六十八カ国、十二月のウィーン(オーストリア)会議では百三十八カ国に増え、アメリカなどクラスター爆弾を温存しようとする勢力も無視できなくなっています。国際会議には参加しながら、全面禁止条約作りを妨害する日本政府の態度が問われます。

アメリカの代弁者

 国連の潘基文(パン・ギムン)事務総長は、昨年十一月の国連特定通常兵器使用禁止・制限条約(CCW)締約国会議に対し、クラスター爆弾が「国際人道法への重大な挑戦」と断定し、「使用、開発、製造、貯蔵、移転を禁止」することを、国連として初めて公式に要求しました。国際的とりくみを後押しするものです。

 クラスター爆弾は、一つの親爆弾から数百個の子爆弾がばらまかれ、戦車群や地上部隊、施設を一度に壊滅させる兵器です。一割以上もの不発弾は、拾い上げて握ったとたんに爆発するため、何も知らない子どもをはじめ民間人が犠牲になっています。不発弾になる割合を下げたからといって正当化できる兵器ではありません。

 戦争を禁止した憲法をもつ日本は国連の決定を待つまでもなく、率先して残虐兵器の全面禁止のために力をつくすべきです。しかし、日本政府は、クラスター爆弾全面禁止の流れに背を向けているのが実態です。

 国連の後押しを受けて、ウィーン会議でオーストリアが全面禁止条約案を示したのに決定されなかったのは、クラスター爆弾の保有に固執している日本、イギリスなどが妨害したためです。日本政府が、国連のCCW締約国会議で議論すべきだなどといって国際会議での決定それ自体を妨害しているのは、世界各地で現にクラスター爆弾を多用しているアメリカの意を受けてのことです。

 通常兵器の使用禁止や制限を実施するために国連がつくったCCWは、ほんらい国際社会がつよく求めているクラスター爆弾の禁止を正面から議論するのが当然です。その議論さえできなかったのはアメリカなどが反対したからです。

 日本政府がCCWで議論をといっても、全会一致のCCWでは、アメリカが反対すれば全面禁止条約作りが不可能になるのは避けられません。CCW任せにするのでは永遠に条約はできません。だからこそ、有志諸国はCCWの枠外でクラスター爆弾の全面禁止条約をつくり、CCWも条約を認めざるをえない状況をつくろうとしているのです。

 二月にニュージーランドのウェリントンで、五月にアイルランドのダブリンで全面禁止条約作りの詰めの国際会議があります。政府は国際的努力を妨げるべきではありません。

軍事優先の転換を

 日本政府は、「人道上の懸念」をいいつつ、安全保障のためだといって自衛隊がクラスター爆弾を持つのを正当化しています。在日米軍ももっています。日本を海外で戦争する国に変えようとする危険な戦争態勢づくりが進んでいるだけに、日本にとってもクラスター爆弾の全面禁止は不可欠です。

 日本政府は軍事優先をやめ、国際的とりくみに合流すべきです。


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