2007年12月27日(木)「しんぶん赤旗」

検定意見は戦争美化勢力の政治介入

文科省誤り認め撤回を


 沖縄戦「集団自決」での軍の強制は、「南京大虐殺」や日本軍「慰安婦」問題とともに、侵略戦争の正当化を狙う「靖国」派が、教科書などから消すことを目標にしてきたものです。

 侵略戦争を美化する「新しい歴史教科書をつくる会」の現会長、藤岡信勝氏らは二〇〇五年に「軍の強制」を削除する運動を開始しました。

 同年、「集団自決」を命令していないと主張する元守備隊長らが、軍の命令を記述した著書は名誉棄損などにあたるとして岩波書店と大江健三郎氏を訴える裁判を起こしました。この裁判の支援者や弁護団には、藤岡氏をはじめ「つくる会」の関係者が多数参加しています。

 文部科学省は「軍の強制」を削除した検定意見の根拠の一つにこの裁判での原告の主張をあげています。

 政府・文科省はこの検定意見について、教科用図書検定調査審議会が「専門的、学術的観点」で調査・審議して決めたものだとしてきました。

 しかし、検定意見の原案である「調査意見書」は文科省の職員である教科書調査官がつくり、初等中等教育局長らが決裁したもので、それが審議会では意見が出ないまま検定意見になったことが、日本共産党の赤嶺政賢衆院議員の国会質問で明らかになりました。

 さらに、日本史担当の教科書調査官や審議会委員の中に『新しい歴史教科書』監修者の門下生や共同研究者が多数いることが、石井郁子衆院議員の追及で浮かび上がりました。検定意見は侵略戦争を美化する勢力が、沖縄戦研究の到達点に反して持ち込んだ政治介入だったことが明白になったのです。

 沖縄県民をはじめとする検定意見撤回の声が高まり、各出版社は「軍の強制」を明らかにした訂正申請をしました。これに対しても「つくる会」は数回にわたって「訂正を不承認にせよ」と文科省に要請し、宣伝や集会を繰り返しおこないました。

 こうした中で、審議会と文科省は、検定意見撤回要求を拒否、訂正申請で出された「軍による強制」という記述も認めませんでした。

 沖縄県民の思いにこたえるには、文科省が誤りを認めて検定意見を撤回し、「軍の強制」の記述を復活させ、政治的介入でゆがめられた教科書を事実にもとづいたものにする以外にありません。(高間史人)



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