2007年12月15日(土)「しんぶん赤旗」

放送法改定 どこが問題か

塩川衆院議員に聞く


 放送の公共性や自主自律等を掲げた放送法が、大きく改定されようとしています。自民・民主・公明の提案により修正され衆議院を通過し、現在参議院で審議中です。総務委員会で質問した塩川鉄也衆院議員に聞きました。


政府介入の仕組みつくる

 ――日本共産党は、放送法等改定の修正案に反対しました。何が問題なのでしょうか。

写真

(写真)塩川鉄也衆院議員

 第一は、NHKの経営委員会のあり方を変質させることです。経営委員会は、公共放送の自主自律を守り、独立性を確保するために設けられました。民主的な決定が行える合議制機関として位置付けられています。

 ところが、放送法改定では経営委員の一部が常勤化され、監査委員も兼任し、強い権限を有することになります。非常勤の委員との間に格差を持ち込み、合議制をゆがめることになります。常勤で強い権限を持つ経営委員の任命は、内閣総理大臣が行うことも明らかになりました。NHKに対する政府の介入の仕組みがつくられることは重大です。

 四日の参考人質疑で、この改定で会社法と同じ監査委員会を新設することについて、郷原信郎・桐蔭横浜大学法科大学院教授が「株式会社と公益的な使命を担うNHKとはガバナンスのあり方は違う。個々の職員の努力を生かすあり方を考えるべきだ」と答えました。まったく同感です。

放送事業寡占化の恐れ

 第二に、民間放送局に対して「認定放送持株会社制度」を新たに導入することです。現行の放送法では、表現の自由ができるだけ多くの者に享有され、多様性や地域性を保障するため、放送を一社に独占させないよう「マスメディア集中排除原則」を定めています。新制度はこの原則を空洞化させ、持株会社は複数の放送事業者の子会社化が可能となり、キー局の放送の寡占化・集中化をもたらす恐れがあります。

 また、国際放送の命令制度の問題では、「命令」から「要請」に名前を変えました。しかし、NHKに努力義務を課すなど、政府の介入を排除できません。

政府与党方針の具体化

 ――改定案は「あるある大事典」のねつ造問題をきっかけにした新たな行政処分を導入しようとしましたが、表現の自由を脅かすものとして、反対の声が広がり、修正案で削除されました。これをもって修正案を評価する報道もあります。

 ねつ造は問題ですが、新たな行政処分は政府が恣意(しい)的に運用できるもので、報道と表現の自由を侵害するものです。番組の適正化は、放送事業者の自律、世論の力によって確立すべきで、行政の関与を行う新たな処分の削除は当然です。

 もともと、放送法改定の政府・与党の主な目的は、竹中元総務相の諮問機関「通信・放送の在り方に関する懇談会」(竹中懇)や、「政府与党合意」を進めることです。具体的には二〇一一年のデジタル化に向かって、NHKのガバナンス強化や、民放には認定放送持株会社制度を導入することでした。一部修正がありましたが、大筋はそのままで問題点は残されています。

 ――衆院では、審議はたった六時間で打ち切られてしまいました。国民の多くは知らされないままです。

 放送のあり方を定め、国民にとって大きな影響を及ぼす放送法の審議を短時間ですませてしまうなどは、あってはならないことです。私は反対討論の中で、厳しく指摘し遺憾の意を表明しました。

 論戦の舞台は参議院に移りました。政府案も修正案も含めて放送法改定には反対、廃案にするという日本共産党の考えを国民的にさらに明らかにしていきたいと考えています。


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