2007年12月12日(水)「しんぶん赤旗」

主張

葛飾ビラ配布事件

社会常識無視した不当判決


 平穏にマンションのドアポストにビラを入れることが犯罪にあたる―十一日控訴審の判決があった東京・葛飾のマンションでのビラ配布事件で、東京高裁は一審の無罪判決をくつがえし、被告人の荒川庸生さんに罰金五万円の有罪判決を言い渡しました。憲法の守り手であるべき裁判所が、憲法で保障された言論・表現の自由や政治活動の自由を乱暴に踏みにじる、まったく不当な態度だといわなければなりません。

配布の自由は市民の常識

 事件とされたのは、多くの人が日常的に何の問題もなくおこなっているマンションへのビラ入れにすぎません。政治的ビラだけでなく、催し物の案内、営業の宣伝広告、公共機関のお知らせなど多種多様な宣伝物が、毎日何枚も各戸のポストに入れられているというのが市民の常識です。マンションといっても、廊下や階段はふつうは閉鎖されているわけではなく、ビラ配布のほか、各戸を訪問する友人や子どもたちの交流、郵便物や運送物の配達、新聞の配達などなど、いわば公共道路のように使われている面があるのは、だれにも否定できない事実です。

 荒川さんのばあい、三年前の年末、いつもやっているように、日本共産党葛飾区議団発行の「葛飾区議会だより」や区民アンケートなどを、開放型マンションのドアポストに順次投かんした行為が罪に問われました。住民の一人に見とがめられて、本人も知らない間に逮捕されたことになり、不当にも「住居侵入罪」という罪名をつけられ、起訴、裁判という経過をたどってきました。

 それでも一審の東京地裁判決(昨年八月)は、ビラ配布の実態をつぶさに検討し、マンションへの立ち入りは正当な理由がある、違法かどうかは「社会通念」を基準にすべきで、現在の社会通念はそのようなビラ配布員の立ち入りを違法な行為とはみない―ということを詳細に論証し、無罪としました。

 今回の東京高裁判決は、社会的なビラ配布の実態を総合的にみた地裁判決を口先だけで否定し、オートロックマンションではない、管理人も常駐していないなど部外者の立ち入りが事実上許されているという実態があるのに、立ち入りを禁じた理事会の決定が張り出されており、居住者の異議がないから管理組合の総意が存在すると強弁しているのです。

 しかも、そのうえにたって、「たとえ思想を外部に発表するための手段であっても、その手段が他人の財産権等を不当に害することは許されない」などとのべています。実際には居住者の「財産権」など侵されていないのに、憲法二一条の言論・表現の自由の規定を無視し、それが「公共の福祉」などの理由で簡単に制限できるかのような、きわめて不当な、転倒した立場にたって、地裁判決を破棄して有罪としたのです。

異常な規制打ち破るため

 国民の権利や社会常識を無視した東京高裁判決を認めるわけにはいきません。弁護団は直ちに上告の手続きをとりました。ビラ配布の正当な権利、言論・表現の自由は、このような判決によっても、変えることはできません。

 葛飾マンションビラ配布事件の勝利のためにひきつづくたたかいを支援するとともに、大分・豊後高田市での大石忠昭さんの公選法事件、東京での堀越・世田谷の二つの国公法事件の三事件と合わせ、ビラ配布の権利と選挙活動・政治活動にたいする異常な規制を打ち破るたたかいを、全国に広げることが重要です。


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