2007年11月28日(水)「しんぶん赤旗」

主張

原爆症認定

被爆者と連帯の運動・世論を


 原爆症認定制度の改善を求めるたたかいが、重要な段階を迎えています。国が原爆症の認定申請を却下したのは不当だと訴えた集団訴訟で敗訴をつづける厚生労働省は、九月末に認定のあり方についての検討会を設置、年内には結論を出すといわれています。

 検討会は、昨年来の原爆症認定集団訴訟の六地裁判決すべてが現在の認定のやり方をきびしく批判したことから、「見直し」のために始まったものです。しかし被爆者側からは国の態度に懸念の声も聞かれます。

制度の抜本的な改善を

 厚労省は検討会での議論の一方、敗訴した六地裁すべてについて高裁に控訴し、また全国十五カ所の地裁で裁判を続けています。裁判で厚労省側は、これまでの判決で誤りが明確に指摘された従来の主張を、何の反省もなく繰り返しています。

 入市被爆者や遠距離被爆者はほとんど放射線に被曝(ひばく)していない、だから、これらの人びとの脱毛や下痢などは原爆による急性症状ではなくストレスや赤痢のせいだなど、認定却下を正当化しています。

 これまで国が敗訴した六つの判決はいずれも、このような結論を導く厚労省の「認定審査の方針」をきびしく批判しました。爆発一分以内の初期放射線だけを対象にした「DS86」という被曝線量推定方式を絶対視し、疾病ごとに被曝による発症確率を割り出した「原因確率」にあてはめ機械的に判断するやり方です。

 各判決は、「DS86」では無視されている残留放射線の影響を考慮すべきで、多くの入市被爆者に見られた下痢や脱毛を放射線と無縁と見ることは困難だなどと指摘しました。被爆状況、被爆直後の行動や急性症状、今日までの健康や疾病の状態などを全体的・総合的に検討判断すべきで、これまで当たり前のように却下されてきた多くの遠距離被爆者、入市被爆者についても、認定すべきだとしています。

 六つの地裁での敗訴にもかかわらず高裁などで裁判を続ける厚労省は、「DS86」や「原因確率」にあくまでも固執しています。このため検討会でも、部分的な手直しで決着させようとしているのではないかと危惧(きぐ)されています。

 原告たちが語る被爆の実態や、健康、暮らしを破壊されたもとでの六十年余の苦しみ。被爆から今日まで医師や科学者が積み重ねてきた膨大な記録や研究。これらに真摯(しんし)に向き合うなかで必然的に導き出された司法の流れを逆流させ、被爆者の苦しみを増幅させるようなことを許すことはできません。

 国・厚労省は、判決と被爆者の認定制度改善の要求を正面から検討し、「審査の方針」と、その機械的な運用に固執する態度を改め、小手先の手直しではなく、認定制度の抜本的な改善に踏み切るべきです。

12・4折鶴行動と大集会

 頑迷な国の態度の根底には、アメリカの核抑止力や核兵器使用政策さえ容認し、原爆被害をふくめ国民は戦争被害を「受忍」すべきだとする、国民のねがいとはまったく相いれない危険な姿勢があります。原爆症認定は原告だけ、被爆者だけの問題でなく、核兵器廃絶、憲法九条まもれのたたかいの重要な一翼です。

 十二月四日には、集団訴訟の勝利、認定制度の抜本改善をかかげ、厚労省周辺での折り鶴・人間の輪行動や大集会(東京・九段会館)などがおこなわれます。

 被爆者とともにこれを成功させ、国民的な世論と運動をさらに広げることが求められます。


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