2007年11月25日(日)「しんぶん赤旗」

解説

「環境・労働」でも共感

労働党勝利 オーストラリア総選挙


 二十四日に投開票されたオーストラリアの総選挙では、「対米追随からの脱却」を訴えた野党・労働党が勝利し、「米国の副保安官」と批判されたハワード首相の保守連立政権(自由党、国民党)への国民の厳しい審判が下されました。

 労働党も米国との軍事同盟(アンザス条約)を堅持する「対米重視」の立場では保守連立与党と同じです。しかし、選挙戦では海外派兵や環境・労働問題、教育・福祉問題が争点となりました。政権交代では大きな政策転換が予測されています。

 十一年半に及んだハワード政権は二〇〇一年の9・11対米同時多発テロ以降、米国主導のアフガニスタン戦争(開戦〇一年)とイラク戦争(同〇三年)に参戦。現在も、イラクとその周辺に約千五百人の戦闘部隊を派遣し、アフガニスタンへの派兵も続けています。また、労働法の改悪を強行し、労働者保護法規を骨抜きにしてきました。

 これにたいし、労働党はイラクからの豪州軍部隊の撤退期限を設定し段階的に引き揚げることを主張。ロッド党首は、地球温暖化防止に向け先進国に温室効果ガスの削減義務を課した京都議定書の問題でも、ハワード首相が米国の脱退に追随して批准を拒否したことを激しく批判し、京都議定書の即時批准を公約しました。ロッド氏はさらに、改悪された労働者保護法規の段階的見直しも公約に掲げました。

 労働党のこうした訴えは、米国の「対テロ」戦争への全面的追随に嫌悪感を抱く有権者の共鳴を獲得し、地球温暖化の問題でも記録的な干ばつで農業被害が深刻化する農民や水不足に苦しむ都市住民はじめ不安定雇用にあえぐ勤労者の心に浸透したとみられてます。

 ハワード首相は国民の平均資産を在任期間に約二・五倍に増やすなど、経済成長を実現させた実績を誇示し、「労働党政権になれば好景気が変わる」と訴えましたが、支持を広げることはできませんでした。(宮崎清明)


 オーストラリア総選挙 今回の総選挙で下院(定数一五〇)全議席と上院(同七六)の四十議席を改選。下院は小選挙区制、上院は六州、北部特別地域、首都特別地域ごとに比例代表制で選出します。下院では選挙区の全候補者に対し有権者が優先順位をつけて投票し、「首位」の得票が過半数に達した候補者がいれば当選。いない場合、最下位の候補者の票を優先順位に応じて配分し、過半数得票者がでるまで、同様の方法で下から順に票の配分を繰り返します。選挙権と被選挙権は十八歳以上。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp