2007年11月25日(日)「しんぶん赤旗」
主張
額賀財務相
記録も記憶もないに残る疑惑
守屋武昌前防衛次官の、軍需専門商社「山田洋行」からの過剰接待に絡み、宴席への同席などが指摘された額賀福志郎財務相(元防衛庁長官)の疑惑がいよいよ深まっています。額賀氏への疑惑は、宴席への同席だけでなく、ゴルフへの接待、パーティー券の購入、お車代、さらには防衛施設局の発注工事をめぐる口利き疑惑など広がる一方です。額賀氏は「記録もないし、記憶もない」などといい逃れしようとしていますが、現職閣僚として誠意をつくして疑惑にこたえることが求められます。
証人喚問での証言は重い
額賀氏への疑惑が一気に表面化するきっかけになったのは、先週、参院外交防衛委員会で行われた守屋前次官への証人喚問でした。逮捕された「山田洋行」の宮崎元伸元専務との宴席に同席した政治家は誰かと問われ、「久間(章生元防衛相)先生と額賀先生でなかったかと思う」「額賀先生とのあれ(宴席)ははっきり覚えていまして」と証言したのです。
議院証言法にもとづいて宣誓し、偽証すれば罪に問われることにもなる証人喚問での証言は重大です。額賀氏は「記録にない」「記憶もない」と言い逃れ、その後も国会で守屋氏の公用車の運転記録などにもとづき、宴席の日にちまで突きつけられても、認めようとしていません。同席を認めないのはよほど後ろめたいからか。額賀氏が守屋氏の証言をあくまで否定するなら、額賀氏自身にも国会へ証人として出頭してもらい、証言を求めることが不可欠です。
だいたい、額賀氏のいう、「記録がない」「記憶がない」というのは、事実そのものを否定する言い分ではありません。宴席への同席は事実だが記録がないだけか、記憶がないふりをしているだけではないのか。額賀氏は、口先で言い逃れるのではなく、疑惑解明に誠意をつくすべきです。
宴席への同席問題だけでなく、この間次々指摘されてきた疑惑への額賀氏の対応は、文字通り「不誠実」の一語につきます。「山田洋行」のオーナーの娘の結婚式に出席して多額の「お車代」をもらったのではないかと追及されれば「『ご祝儀』で返した」、「山田洋行」にパーティー券を買ってもらっていたではないかと追及されれば「返した」、発注工事の口利き疑惑には知らぬ存ぜぬ…。額賀氏には、特定の軍需企業と癒着し、疑惑を抱かれる行動をとったことへの、自覚も反省もありません。
二回にわたって防衛庁長官を務めた額賀氏は、久間氏らと並んで「防衛」族議員の大物で、三菱重工など軍需産業の大所とも深いつながりが指摘されています。「防衛」族議員と軍需産業などでつくる団体の役員を務め、政軍財をつなぐ「フィクサー」(黒幕)、秋山直紀氏が中心になって開くシンポジウムの際は、旅費や宿泊費などを負担してもらっていた疑惑も浮上しています。
「山田洋行」との疑惑にとどまらず、軍事利権の中枢にかかわる問題として、額賀氏の疑惑は徹底究明する必要があります。
任免権者の首相の責任
見過ごせないのは、額賀氏の疑惑にたいする、福田首相の態度です。「財務相はしっかり説明し、疑念を解く努力をすることが大切だ」と、まったくひとごとという態度です。
福田首相は、額賀氏を閣僚に起用した任免権者です。自ら任命した閣僚に疑惑が指摘されている以上、自ら率先して解明の努力をつくすことこそ任免権者の責任です。その責任を果たさないなら、首相自身が責任を問われることになります。