2007年11月22日(木)「しんぶん赤旗」

主張

労働関連2法案

人間らしく生活できる賃金に


 政府が国会へ提出した労働関連三法案のうち、最低賃金法改定案と労働契約法案の二つの法案の審議が参院で始まりました。いずれも政府の改定案を自・公の与党と民主党が共同で修正、賛成多数で衆院を通過(八日)させたものです。

 日本共産党は衆院で二法案とも反対しました。最低賃金法改定案は最低賃金の抜本的引き上げにほど遠く、労働契約法案は労働者の同意がなくても使用者が就業規則の変更で労働条件を一方的に切り下げる仕組みが盛り込まれたからです。

「全国最賃」は盛り込まず

 最低賃金法改正では、日本共産党は“働いても貧困から抜け出せない根底には「先進国」最低の最低賃金がある”と指摘し、世界では当たり前の全国一律最低賃金制の実現と、生計費を基準にした抜本的引き上げを要求してきました。党国会議員団が先月二十二日発表した「最低賃金制改善のための要求」では、最低賃金制は労働者全体の賃金水準を引き上げ、全国一律制を基本とし、金額は当面時給千円以上を目標に抜本的に引き上げる―という基本的な考えを明らかにしています。

 人間らしく生き、働きたいというのは労働者の当然の要求です。ところが自公政治がすすめてきた弱肉強食の「構造改革」路線によって、収入が生活保護水準にも満たない貧困と格差が社会を覆う深刻な事態がつくり出されてきました。一千万人を超す年収二百万円以下の低賃金労働者や、四百万―五百万世帯にのぼるといわれるワーキングプア(働く貧困層)は社会問題となり、先の参院選で国民は「自・公政治は、もうごめん」との審判を突きつけました。

 政府が最低賃金の引き上げに言及し、改定案を提出したのは、全労連や連合をはじめとした労働組合や国民の運動、日本共産党などの国会内外でのたたかいによるものです。衆院段階の修正で改定案に加えられた「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう…」との文言はその反映です。二十日の参院委での小池晃議員の質問で「憲法二五条の規定を加えたことで最低賃金を生活保護水準以上に引き上げることを可能にした」との答弁を引き出したことは重要です。

 改定案には時間給千円や民主党が掲げた「全国最低賃金」の要求も盛り込まれず、労働者の生計費より優先する「企業の支払い能力」や都道府県でバラバラの最低賃金などの問題が残されました。法案は最低賃金抜本的引き上げの確かな保障にはなっていません。労働者とその家族が健康で文化的な最低限度の生活を営むための必要な生計費を満たすものとするために、運動の一層の強化が求められます。大企業の下請け単価買いたたき規制や優遇税制、特別融資、賃金助成など中小企業への助成策の抜本的強化も必要です。

国民が願う抜本的な改定を

 労働契約法案は労働契約のルール化などをめざしたものですが、労働者と使用者とが対等で結ぶべき契約にもかかわらず使用者が就業規則の変更で一方的に労働条件を切り下げることができる条項が盛り込まれています。これは最高裁判例でも確立した雇用のルールをゆがめるものです。解雇の金銭解決制度なども検討課題としており、労働法制の一層の規制緩和につながりかねません。

 労働者の生活と権利に密着した労働関連法案が貧困と格差を解消し、国民が人間らしく生き働けるものとなるよう、参院段階の審議でよりよいものにすることが求められます。



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