2007年11月20日(火)「しんぶん赤旗」

主張

財政審建議

庶民と地方にしわよせするな


 財務相の諮問機関である財政制度等審議会が来年度の予算編成に関する建議(意見書)をまとめ、額賀福志郎財務相に提出しました。

 建議は社会保障や地方予算を標的に「一層の削減努力」を要求し、「国民共通の課題として」「消費税を含む抜本的な税制改革を実現させる」ことを掲げています。

 庶民負担増や地方へのしわ寄せに対して「もうがまんならない」と、国民は参院選で政権・与党に厳しい審判を下しました。この国民の審判に真っ向から挑戦する方針です。

架空の数字で脅迫

 参院選後も政府・与党は、財政悪化を過大に試算し、その元凶が社会保障であるかのように描いて、国民に負担増と給付削減を強いるキャンペーンを続けてきました。

 経済財政諮問会議は十月に、二〇一一年までの短期の試算に加え、GDP(国内総生産)比の債務残高を増やさないことを目標にした二五年までの長期試算を示しました。その間は軍事費も公共事業費もどんどん増えるといういいかげんな試算で、二五年には最大で三十一兆円の増税が必要だというものです。

 財政審は、それをさらにエスカレートさせています。

 建議は諮問会議よりも二十五年先の二〇五〇年まで試算を延ばし、〇七年に三十兆円の収支改善が必要で、何もしなければ五〇年の債務残高は二千兆円を超えるなどとしています。五〇年時点でGDP比の債務残高を今年度末の半分以下の60%に圧縮する無謀な設定や、三三年から五〇年の名目成長率をわずか1%と想定するなど税収を低迷させる前提を置いています。

 財政の悪化度合いや必要な収支改善の規模を意図的に膨らませて試算し、架空の数字で国民を脅迫するようなやり方は許せません。

 地方財政について建議は、地方法人二税(法人事業税と法人住民税)を「共同財源」として再配分し、都市と地方の税収格差を是正するとしています。地方法人二税には大きな税収格差がありますが、地方税は地方自治体の歳入の37%にすぎません。最終的には地方交付税で財政力格差が是正され、必要な行政サービスを保障することになっています。

 全国知事会も指摘しているように、都市と地方の格差拡大を招いた根本的な原因は、政府が「三位一体改革」で地方交付税を五・一兆円も削減したことにあります。地方を痛めつけた政府・与党の責任は重大であり、地方の疲弊と格差に歯止めをかけるには、地方交付税の財源保障・調整機能を強化し、地方財源を充実させることこそ必要です。

「投資家が判断する」

 財政審の試算をまとめた富田俊基部会長代理(中央大教授)は、記者会見で「何もしなければ、この国の余命は何年か」と聞かれ、「投資家が判断することだ」と答えました。

 日本が巨額の借金を抱えていることは事実であり、無軌道な膨張が許されないのは当然です。しかし、富田部会長代理が認めているように、累積債務の大きさが財政破たんに直結するわけではありません。日本の国債は主に日銀や郵政、銀行や保険会社が保有し国内でまかなわれており、国債市場は安定しています。

 重要なのは、くらしと経済の安定を図りながら、軍事費など財政の無駄を削り、大企業・大資産家ら負担する力があるものに相応の負担を求めることです。庶民や地方自治体へのしわ寄せは、これに完全に逆行するやり方です。


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