2007年11月10日(土)「しんぶん赤旗」

主張

防衛利権

政軍財の癒着を究明せよ


 「これはわいろに違いない」とだれもが思いました。軍需商社山田洋行の宮崎元伸元専務による守屋武昌前防衛事務次官への過剰接待です。

 その宮崎元専務を東京地検特捜部が逮捕しました。同社の米国子会社にプールされていた裏金一億円を着服したという業務上横領容疑です。しかし、事件がこれで終わりと考える人はいません。過剰接待の見返りは何か、年間五兆円に及ぶ巨額の軍事予算が腐敗の温床ではないか、政治家はどう動いたのか―。長く聖域とされてきた巨大な「政軍財」利権構造に、深く切り込むべきです。

巨額の裏金使い…

 当面の焦点は、守屋前次官による元専務側への便宜供与の内容です。すでに、山田洋行が防衛庁(現防衛省)への装備品納入での多額水増し請求で処分を免れた問題、自衛隊の次期輸送機(CX)エンジン調達で元専務の立ち上げた新会社への発注に口利きしたなどの問題が浮かんでいますが、地位を利用して行政をゆがめた事実が明らかになれば、防衛省の官僚トップによる収賄事件へと発展することになります。

 なにしろ元専務が守屋氏につぎ込んだ金は半端ではありません。一回四―五万円かかるゴルフ接待が少なくとも二百回というのですから、それだけでも一千万円近い負担です。マージャン、飲食、高級クラブ接待、高価な贈り物もあります。

 元専務は山田洋行で年間一億円もの接待費を使っていたとされます。営利企業が、なんの見返りも無しに、ただ「友だちづきあい」(守屋氏)のため、こんな巨額の金を出していたとしたら、それこそ異常です。

 守屋氏は二十三年前、防衛庁OBを介して宮崎元専務と知り合い、守屋氏もまた、後輩の官僚たちを元専務に引き合わせたと認めました。防衛庁から山田洋行に天下りした者も多数います。癒着は守屋―宮崎関係にとどまらず、軍需産業と防衛省のなれ合い・相互依存関係として連綿と築かれてきました。その大本にあるのが、国民の税金を湯水のように注ぐ巨額の軍事費であることに、怒りを覚えぬ人はいません。

 宮崎元専務が、守屋氏を中心とする防衛省人脈とともに、米国政府やゼネラル・エレクトリック(GE)など軍需産業と強い結びつきをもつ人物であることも注意をひきます。事は、日米の軍需産業と防衛省との癒着という様相さえみせています。

 守屋氏は衆院の証人喚問で、日本共産党の赤嶺政賢議員の尋問に、元専務との会食で防衛庁長官経験者を含む複数の政治家と同席したことを認めました。久間章生元防衛相は現職大臣時に接待を受け、額賀福志郎財務相は多額の「お車代」を受け取っていました。疑惑の解明を、守屋氏にとどめず、政治家にも広げて徹底的に行うことが求められます。

司法と国会が解明を

 守屋氏にはインド洋での海上自衛隊の給油をめぐる転用疑惑の隠ぺい工作にも加担した疑いが浮上しています。こんな疑惑まみれの状態で、「世界の平和」だの、「国際貢献」だのを語るというのは、まことにおこがましいことです。政府が数々の疑惑に口をぬぐって戦争支援のテロ新法を、国会の会期を延長してまで成立させようとしているのは断じて許されません。

 日本共産党の穀田恵二国対委員長は、元専務の逮捕を受け、「司法による厳正な捜査と国会における解明は車の両輪」とのべました。真相解明へ、国会が国民にたいして負う責任も、とりわけ重くなっています。


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