2007年11月9日(金)「しんぶん赤旗」

山田洋行元専務を逮捕

横領容疑

守屋前次官との癒着解明へ

「政軍財」の利権構造にメスを


 防衛省の守屋武昌前事務次官(63)との癒着が問題になっている軍需専門商社「山田洋行」(東京都港区)元専務の宮崎元伸容疑者(69)を、東京地検特捜部は八日、同社米国現地法人から約一億円を引き出し着服したなどとして業務上横領と私文書偽造の疑いで逮捕しました。資金の一部は、同容疑者の新会社設立に流用された疑いが強いといいます。特捜部は二人の癒着についても全容解明を目指します。同時に巨額の軍需商戦をめぐる「政軍財」の利権構図にもメスを入れることが求められます。


 調べによると、宮崎容疑者は、米・ワシントンにある山田洋行の現地法人「ヤマダインターナショナルコーポレーション」(YIC)で毎年、役員報酬を支出したように装って裏金をつくり、昨年七月ごろ、同社から約一億円を日本国内に送金させた疑い。また、同容疑者は同月、米商社との独占販売代理店契約書を山田洋行に不利な内容に書き換えた疑い。

 約一億円の一部は昨年九月、宮崎容疑者が設立した競合商社「日本ミライズ」(同)の資金などに流用された疑いが強いといいます。

 守屋前次官は十月二十九日に行われた衆院の証人喚問で、「ゴルフ接待は二百回は超えている」などと説明。航空自衛隊の次期輸送機CXエンジンの調達をめぐって宮崎容疑者側への便宜供与も指摘されましたが、「一切ございません」と否定しました。

 同容疑者や山田洋行と政治家の癒着問題も浮上。久間章生元防衛相や額賀福志郎財務相(元防衛庁長官)が高額の「お車代」を受け取ったり、宴会接待を受けた疑惑が指摘されています。十五日に参院外交防衛委員会で同容疑者への証人喚問が予定されていました。

司法と国会で解明が必要

穀田氏が会見

 日本共産党の穀田恵二国対委員長は八日、軍需専門商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者が逮捕されたことを受け、国会内で記者団に、次のように述べました。

 この問題では、司法による厳正な捜査と国会における解明は、車の両輪だと思います。

 日本共産党の赤嶺政賢議員は、守屋武昌前事務次官の証人喚問で、宮崎容疑者とともに防衛庁長官経験者とも談合していたことを明らかにしました。この談合が何のためだったのか、こうした談合が、それだけだったのかをはじめ、しっかりとした解明が必要だと思っています。

 とくに、お金の使途、CX(次期輸送機)エンジンの選定などで防衛利権がどう動いたのか、防衛政策がゆがんだことがなかったのか―これらの解明が必要です。


解説

深い闇に光あてる好機

 逮捕された軍需専門商社「山田洋行」元専務の宮崎元伸容疑者は、防衛官僚や政治家に取り入ることによって軍需商戦を勝ち抜いてきた人物です。

 一九九四年にも自衛隊の早期警戒管制機AWACS導入をめぐる疑惑で宮崎容疑者の存在が浮上したことがあります。同機エンジンを供給したゼネラル・エレクトリック(GE)の代理店契約が、他の商社から山田洋行に変更されるという異例の事態に政治家の関与がとりざたされました。宮崎容疑者を取材すると航空自衛隊幹部出身の田村秀昭参院議員(当時)の後援会役員だったことを認め、「田村先生が(航空自衛隊の)装備課長時代からのつきあい」と語っていました。

 問題になっている守屋武昌前防衛事務次官へのゴルフ接待も防衛政策課長時代からだといいます。徹底して食い込んだ癒着関係が軍需商戦の利益とどう結びついていったのか。便宜供与の有無などの解明が焦点となります。

 同時に、この機会に徹底解明する必要があるのは、年間五兆円の巨額な軍事予算をめぐる「政軍財」の利権構造です。こうした問題が表面化するたびに政治家の名前がとりざたされます。防衛族議員を中心とした癒着構図で国民の税金が食い物にされていないのかどうか。「軍事機密」に守られた深い闇に光をあてる絶好の機会です。捜査はもとより国会の場でも明らかにすることが必要です。(森近茂樹)


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