2007年10月26日(金)「しんぶん赤旗」

主張

全国学力テスト結果

教育むしばむ危険直視を


 全国学力・学習状況調査(全国学力テスト)の結果が公表されました。

 基礎的な知識についてはおおむね理解はあるが、知識の活用には課題があるというのが主な内容です。朝食を家族と一緒にとる子どもの割合など、生活面のデータもあります。

全員受けさせる必要なし

 結果の多くはすでに知られていることです。どうみても抽出調査で十分でした。テストの結果自体が、七十七億円もの税金をつかい、子どもや家庭のプライバシー侵害の危険までおかして全員に受けさせる必要がないことを証明したといえます。文科省は全員参加の理由に「子どもに答案を返して指導する」を加えましたが、「四月のテストの結果を今ごろ返されてもしょうがない」という声があがっています。

 直視すべきは、国が全員参加型学力テストを計画・実施したことが、県や市独自の同様の学力テストの呼び水となり、全体として競争と序列化、授業の統制などの深刻な実態をうんでいることです。

 東京都足立区はホームページで区独自の学力テストの学校順位を公表し、平均点を各学校の予算に連動させました。学校はいっせいテストで何点取れるかの競争にさらされ、教員は「テスト当日点数が取れない子が休むとホッとするようになった自分が怖い」というほど追いつめられました。ついには校長等が点をあげるために不正工作をおこない、区民の厳しい批判で成績順の公表、予算連動ともに中止となりました。

 文科省は「序列化につながらない取り組みが必要」といいましたが、実際には都道府県ごとの平均点を公表して順位競争をあおっています。多くの自治体は学校順位の公表をしない意向ですが、公表の動きもあります。あらためて序列化に走らないように訴えたいと思います。

 学力テストの結果が金科玉条となり、そのことで毎日の授業がゆがむことはいっそう深刻です。

 独自の学力テストを小二から始めたある県でのことです。低学年の子どもは一生懸命、順番に問題を解きます。終了のベルがなり「先生待ってー」の悲鳴のなか答案を回収。採点、結果分析は業者です。教員は「あなたのクラスはここが弱い」とデータが示され、その改善策の提出を求められます。「漢字が弱い」と示された教員は「漢字の問題は後のほうなので無回答が多い。指導したいことはほかのところなのに」と憤ります。

 こんなやり方が横行すれば教員のやる気をそぎ、子どもの学習がやせ細るだけです。今回の結果も、ここが弱いから強めよ式の「改善のポイント」が多く示されています。文科省でさえ今回の結果は「学力の一部」とし、専門家からは設問自体への疑問も表明されています。「ポイント」はあくまで参考意見であり、教員に強制することは許されません。

競争ではなく条件整備を

 世界と日本の優れた教育実践の流れは、いま広がりつつある学力テスト体制の方向とは正反対です。「学力世界一」で注目をあつめるフィンランドは、いっせいテストなどの競争的なやり方をやめ、学びあい助けあいを大切にしています。教育内容について国のガイドラインはありますが、教員に大幅な自主性が認められています。二十人学級などの手厚い教育条件の整備にも熱心です。

 子どもの成長のため、全国学力テストの中止、教員増や少人数学級などの条件整備、教員の自由・自主性の保障を実現するために力を合わせることが重要です。


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