2007年10月19日(金)「しんぶん赤旗」
主張
テロ新法
まだ報復戦争を支援するのか
政府は、インド洋での海上自衛隊による米艦船などへの給油支援を継続するため、新テロ特措法案を閣議決定し、国会に提出しました。政府・与党は会期の延長をふくめ、なんとしても成立させる構えです。
アメリカが「自衛」だといって始めたアフガニスタン報復戦争ではテロがなくせないことが明白になり、戦争ではなく政治的取り組みでテロの根絶をめざせという国際社会の声が大きくなっています。政府がこうした声を無視し、報復戦争支援を継続するために新法をつくるのは大きな誤りです。
6年間の教訓も学ばず
報復戦争の六年間がもたらしたのは、テロ根絶ではなく、テロの拡散と、今年だけで一千人(九月の国連事務総長報告)にもおよぶアフガニスタンでの民間人の犠牲であり、戦闘激化のために復興事業もままならず、貧困がますます進んでいる悲惨な実態です。医療援助もいよいよ困難と国際人道機関が訴える状況です。これ以上戦争を続けるべきでないことは、誰の目にもわかる道理です。
もともと憲法で戦争を放棄している日本は、アフガニスタンの事態を悪化させた六年間の戦争参加を反省し、軍事支援をやめるべきです。六年間の戦争支援がどうだったのかの検証もせず、アメリカいいなりに戦争支援の継続に固執するのは根本から間違っています。
新テロ特措法案は現行テロ特措法を若干手直ししていますが、報復戦争支援に変わりはありません。一年間の時限立法といっても、一年ごとの延長をくりかえせば期限などないに等しいしかけです。
政府は、支援内容を給油・給水に限定し、「テロ対策海上阻止活動」に従事する各国部隊を対象にするといって、国民の批判をかわそうとしています。しかし海上阻止活動は、「アフガニスタンでのテロとのたたかいにおける重要な一部」であり、地上戦と切り離すことができないことはアメリカの説明(〇三年五月第五回日米調整委員会)でもあきらかです。報復戦争を助長するのは明白です。
海上阻止活動はアフガニスタン領土での武力行使とは違うなどと政府はいいますが、これも通用しません。
海上阻止活動はアメリカが計画し米軍が指揮する軍事作戦です。海上阻止活動に参加する米艦船がアフガニスタン領土を爆撃するかもアメリカまかせです。空爆する米艦船に給油しないと政府がいっても、なんの保証にもなりません。
自衛隊が給油した米強襲揚陸艦が攻撃機ハリアーでアフガニスタン領土の爆撃をくりかえし、特措法でアフガニスタン作戦に限るとされた給油がイラク作戦に転用されていた事実さえ明らかになっています。
国会が自衛隊の活動を精査し承認する規定をもりこむのは当然です。国会の事後承認規定さえ除外したことは議会制民主主義のうえからも、とうてい許されません。
憲法生かした方策を
この国会で検討しなければならないのは、戦争ではなく、法と正義でテロを根絶するために、日本が憲法を生かしてどう貢献するかです。戦争は憎悪を生むだけです。殺しながら、助けることはできません。
報復戦争から政治的解決の方向に転換するしか道はありません。
新法は撤回し、自衛隊はただちに撤退すべきです。貧困、飢餓をなくし、干ばつ、教育などテロの土壌をとりのぞくために、日本が役割を果たすことがなにより大事です。