2007年10月13日(土)「しんぶん赤旗」

主張

労働者派遣法

抜本改正は「待ったなし」だ


 今国会の審議を通じて、いくら働いても生活保護水準以下の生活から抜け出せないワーキングプアなど不安定で極めて低い賃金を強いられている非正規雇用の広がりが、改めてクローズアップされました。とりわけ携帯やメールで日給仕事を得る「日雇い派遣」など、派遣労働者の実態は深刻です。

 非正規雇用を野放しにしている労働法制の規制緩和路線から転換し、登録派遣や日雇い派遣の禁止をはじめ派遣労働の規制を強化することは「待ったなし」です。

原因は労働法制の改悪

 この五年間で、従業員の賃金(従業員給与と福利厚生費)は五十二兆円から四十八兆円へと四兆円も減少しています。逆に資本金十億円以上の大企業の経常利益は一九九七年度から二〇〇六年度までの九年間で、十五兆一千億円から二・二倍の三十二兆八千億円に膨らんでいます。

 大企業の大もうけと、労働者全体の労働条件の悪化・賃金減をもたらしているのが非正規雇用の野放しです。非正規で働いている人は千七百三十一万人で、全労働者の三人に一人(33・2%)です。とくに若者の二人に一人は非正規です。年収二百万円に届かない人が一千万人を超え、派遣社員では49・6%、契約社員・嘱託でも44・8%を占めています。

 労賃のピンハネで稼ぐ労働者供給(派遣)業は戦前、「口入れ稼業」などと呼ばれ、労働者を低賃金で無権利の過酷な労働に追い立てました。このため戦後は、こうした間接雇用である労働者供給業は原則禁止されました。ところが政府は、財界・大企業の要請に応じて、まず一九八五年に十六の専門業種に限定する形で労働者派遣を認めました。十一年後の九六年に派遣対象を二十六業種に広げ、九九年には対象業種の規制さえやめて原則自由化しました。二〇〇四年からは製造業への派遣も解禁し、正社員から派遣社員への置き換えが大規模にすすみました。

 日本共産党の志位和夫委員長、市田忠義書記局長がそれぞれ衆・参両院の代表質問で、また佐々木憲昭衆院議員が予算委員会で取り上げたように、その背景にはリストラで正規雇用を減らしながら派遣、請負、パートなど非正規雇用に次々と置き換えていった大企業の労務政策と、それを促進してきた労働法制の規制緩和路線があります。

 労働法制の規制緩和路線からの転換を求める声が高まっており、四日には日本共産党、民主党、社民党、国民新党の代表と全労連や連合などに加盟する労働組合が国会内で一堂に会し、派遣法の抜本改正をめざしてシンポジウムが開かれました。

 労働者派遣は臨時・一時的な場合に限定し、正規雇用の代替にしないという原則にたちもどり、派遣労働者に直接雇用、正社員への道を開くべきです。賃金はヨーロッパのように同じ仕事なら待遇も同じにするべきです。とりわけ日雇い派遣は政治の力で直ちになくすべきです。

首相は自らの言葉に責任を

 日本共産党の志位委員長の質問にたいし、福田康夫首相は、「政府としても派遣法見直しの検討を始めており、その結果をみて適切に対応する」と答えました。しかし、舛添要一厚労相は佐々木議員の質問に、「企業のニーズもある」などとあいまいな態度をとっています。

 非正規労働者の低賃金と過酷な労働を大企業の空前の利益の源泉にすることは、これ以上許されません。労働者派遣法の抜本改正へ、いま世論と運動が重要です。



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