2007年10月8日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

コンビニなくても大丈夫

個性発見 自立の村づくり


 どの町どの村にも、長い年月をかけて人間と自然の営みがつくりあげた個性と魅力があります。小さな町や村、山村の自然と文化を見直し、「住んでよかった」「訪れてよかった」というまちづくりが活発です。


「無い無いづくし」の村で

奈良県山添村

日本共産党村議 奥谷和夫

地図

 神がすむ山、神野山(こうのさん)。このすそ野に広がる人口四千六百人の農山村が山添村(やまぞえむら)です。奈良県北東部、三重県境に位置する村は、鉄道もない、コンビニもない、信号はわずかに一つ。そんな「無い無いづくし」の村です。

 この村で、いま「観光ボランティアの会」(中谷善之輔会長)が中心となり、「山添村の地域資源を活(い)かした観光による内発的むらづくり」事業が県の補助を受けて実施されています。私もボランティアの会の一員です。

 事業の目玉が農村民泊の推進です。九月二日から五日まで、村内の四軒の農家が参加し、奈良県立大学麻生ゼミの全面的な協力を得て「農村民泊モニター・ツアー」がとりくまれました。

 「おみそ汁がおいしかった。また来るね」とツアーで泊まった学生たちが感想を寄せ書き。帰るときには親せきの子どものようになり、農村体験や交流をとおして「むらづくり」や観光振興についての理解と協力が広がっています。

資源活かし

 村で、このようなとりくみをするきっかけになったのは、二〇〇三年におこなわれた市町村合併の住民投票。奈良市との合併を推進する住民運動もあるなかで、村内世論が二分しました。結果はきん差での「自立のむらづくり」の選択となりました。この運動での共同が今日の「自立のむらづくり」のとりくみにつながっています。

 窪田剛久村長は「村が少なくなっても、山添村は自立の道をすすむ」と明言しています。

 村が最初にとりくんだのは行財政改革、村の特別職の給料や報酬の引き下げなど。それとあわせて、村内にある地域資源を活かしたむらづくりをすすめるために「内発的開発・発展を考える会」(奥谷和夫会長)が結成されました。

 この会では、「あれがない」「これがない」と言わず、村にあるものを活かしたむらづくりをすすめよう、そのためには「自分たち自身が村をよく知ることが大事だ」と論議。「観光ボランティアの会」を立ち上げました(〇六年二月)。

 会は村内をいくつかの地域に分けて、地元の人が案内する研修会を繰り返し実施しました。村には縄文時代草創期(約一万二千年前)の桐山和田遺跡など縄文遺跡がたくさんあり「縄文文化発祥の谷」と呼ばれるほどの歴史を持っていること。神野山の鍋倉渓や長寿岩、岩屋・枡型(ますがた)岩など巨石群があり、これがイワクラと呼ばれて全国から見学に来られること。唐招提寺や薬師寺クラスの規模を持つ国の史跡・毛原廃寺等さまざまな観光資源があることを再発見しました。

観光マップ

 「何もない」と思っていた地域に観光資源がいっぱいあることを実感しました。それをセミプロの漫画家の協力を得て観光イラストマップに仕上げました。

 「観光ボランティアの会」では、研修会の開催などとあわせ、春は「桜を見る会」や山菜狩り、「つつじまつり」、夏は「ホタル観賞ツアー」や鍋倉渓のライトアップ。「七夕のつどい」や星空観望会などイベントを開催しています。日常的には、村内の観光ボランティア・ガイドにとりくんでいます。

 山添村を訪れた女性(五十代)は「豊かな自然と縄文の大昔から、人々が住み営み続けてきた暮らしの重み、誇り高き山添人の心が伝わってきた一日でした」と感想を寄せています。

 紅葉のシーズン。神野山や鍋倉渓の散策、三百六十度展望できる山頂からの景色は絶景です。

 山添村までの交通機関は、近鉄奈良駅からバスで約一時間。東京、大阪、名古屋から直通の高速バスが運行しています。自動車は名阪国道(国道25号)を利用で大阪から一時間、名古屋から一時間半。

 視察・見学の問い合わせは、山添村観光ボランティアの会事務局電話0743(85)0970、もしくは同会副会長奥谷和夫電話090(2287)0288まで。


 イワクラ 人の意思のかかわった岩石構築物。遺構と目される岩石、信仰の対象とされた磐座(いわくら)、ランドマークとしての巨石などの総称(イワクラ学会から)。


豊かな自然と共存歴史遺産の再認識

山村の魅力キラリ

 豪雪も大切な水資源、深く険しい森は動植物の宝庫、都市から遠く離れているからこそ「日本の原風景」がある―。

 市町村合併や「都市と地方の格差」で小さな村が自立の道を歩むのは難しい。そんななか、「山村だからこそ」と逆に意気盛んな町や村が増えています。

○日本の原風景

 新潟県と接する山形県小国(おぐに)町。町の九割をブナと落葉広葉樹林におおわれる同町は、「ブナの森と文化」、全国有数の豪雪地帯であることに着目します。白いブナの幹と雪のイメージから森を「白い森」と名付け、「白い森案内人」という町民有志のガイド団体もつくられています。自然資源を活用した山村産業に力をいれ、自然環境や歴史遺産の価値が再認識されている時代に、豊かな自然と共存する山村こそ出番というわけです。

 山形県の最北部、金山(かねやま)町は、けっして住みよくはないが逆に寒冷・豪雪が良質の銘木を生育させるといいます。この「金山杉」と伝統技術に優れた大工職人を誇りに「街並み景観づくり100年運動」にとりくみます。

 「農山村の景観・文化を守る」と“連合”を組んだところもあります。参加団体は北海道美瑛町、北海道赤井川村、山形県大蔵村、岐阜県白川村、長野県大鹿村、徳島県上勝町、熊本県南小国町、宮崎県高原町、長野県木曽町開田高原(NPO法人「日本で最も美しい村」連合)。四日に大鹿村で総会が開かれ、北海道標津町、岐阜県下呂市馬瀬が加わり十一に。「日本の原風景」「日本のふるさと」を都市に向けてもアピールしています。

○地域学の発展

 農山村のまちづくりと歩調を合わせて地域の特性を見直してまちづくりに生かす地域学・地元学と呼ばれる活動が広がっています。「美しい村連合」にも参加する木曽町の田中勝己町長は、「木曽学」を提唱。ふるさとを見直す住民参加のまちづくりのなかで山村の価値を再評価していく運動と位置付けます。

 先の金山町では、「金山高校では『最上学』と、その延長上にある進路学習『卒業研究』、そして学社融合型学習『金山タイム』の三つの地域学習」にとりくみます(同校教頭、『農村文化運動』185号)。


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