2007年10月4日(木)「しんぶん赤旗」

主張

原爆症の認定制度

被爆実態に合った抜本改善を


 原爆症認定基準の在り方を議論する厚生労働省の検討会(座長=金沢一郎・日本学術会議会長)が先月末初会合を開き、日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)から意見聴取しました。田中熙巳事務局長や原爆症認定集団訴訟の原告らが被爆の惨状とあわせ、がんや肝炎などの病気に苦しみながらも原爆症に認定されない現行制度の抜本的改善と裁判の早期解決を訴えました。四日の二回目の会合では、被爆者で物理学者の名古屋大学名誉教授・沢田昭二氏、被爆者医療に携わってきた医師・齋藤紀氏ら専門家が意見をのべます。

認定訴訟の判決踏まえ

 参院選で自民・公明の与党が惨敗した翌七月三十日、原爆症認定却下取り消しを求める集団訴訟の六度目の判決が熊本地裁であり、またも被爆実態とかけ離れた国の認定制度の在り方を批判しました。直後の八月初めには安倍晋三前首相が被爆者団体と会い、認定基準の見直しを約束しました。柳沢伯夫前厚労大臣がこれを受けて「専門家による見直しの場を早く設置する」と明言し、この「原爆症認定の在り方に関する検討会」が設置されたのです。

 検討会は年内をめどに結論をまとめる方針です。与党プロジェクトチームも、自民党の「原爆被爆者対策に関する小委員会」の提言を受け、救済案を十二月初旬にもまとめるとしています。被爆者の運動と世論が国の行政を動かしたといえます。

 「自分の病気は原爆が原因だと認めてほしい」と被爆者が二〇〇三年四月に集団提訴してから四年に及びます。初判決となった〇六年五月の大阪地裁では、遠距離被爆者や救護・肉親捜しなどで原爆投下後の広島・長崎に入った入市被爆者も“病気は原爆の放射線が原因だ”と認めるなど国の認定基準を断罪しました。以来、広島、名古屋、仙台、東京、そして熊本と原告が六連勝しています。集団訴訟に先立つ七つの判決でも国の認定基準を厳しく問い、原告を原爆症と認定しています。司法判断は、国の認定制度をことごとく否定しており、司法の流れは完全に定着しています。国は判決に沿って現行の認定制度を改めるベきです。

 現行の国の認定基準は、原爆が爆発した瞬間の初期放射線による被ばく線量をもとに爆心地からの距離に応じて推定し、疾病のリスクを算定する「原因確率」などで判断しています。この被爆実態を直視しない基準の機械的な適用によって、爆心地から二キロ以上の遠距離被爆者や入市被爆者は切り捨てられてきました。

 被爆者は現在、二十五万一千八百三十四人で、平均年齢が七十四・五九歳と高齢化しています。このうち原爆症と認定されているのは0・8%の二千人余にすぎません。集団訴訟では一日現在、原告二百八十四人が二十二都道府県の十五地裁・六高裁でたたかっていますが、すでに三十六人が亡くなっています。一日も早い被爆者の救済が求められます。

審査なしで原爆症に

 原爆症の認定制度や集団訴訟の解決にむけ、日本共産党はいち早く対策委員会を設置しました。自民、民主、公明各党も対策委員会や議員懇談会を発足させています。国は裁判で完全に否定された現行の認定基準に固執せず、検討会の初会合で被爆者が切望したように、被爆の影響と考えられる病気は審査なしですべて原爆症と認定するよう認定制度を抜本的に改めるべきです。集団訴訟についても直ちに控訴を取り下げることが必要です。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp