2007年10月2日(火)「しんぶん赤旗」

福田首相が所信演説

消費税、「給油」継続を強調

国民審判うけ 格差是正・対話を表明


 福田康夫首相は一日、衆参両院の本会議で、就任後初の所信表明演説をおこないました。「生活者の視点」「国民の信頼」をくり返すなど、演説は参院選でのきびしい審判を色濃く反映したものになりました。しかし、小泉・安倍政権がすすめてきた「構造改革」路線については、「改革の方向性は変えない」と継承を主張し、テロ特措法に基づく自衛隊の米軍支援についても「活動の継続」を強く打ち出しました。


 首相は、安倍政権の「戦後レジーム(体制)からの脱却」「美しい国づくり」という言葉は使わず、改憲問題にも触れないなど、靖国政治の色合いは薄めました。国会運営でも、野党との「誠意をもった話し合い」を強調しました。

 また、内閣の基本方針として、「自立と共生」をかかげる一方、「希望と安心の国づくり」の推進を強調。高齢者医療制度の検討、格差への対応や若者の雇用対策、子育て支援などを列挙しました。

 しかし、そのための方策は示さず、与党間で政権合意した高齢者医療の負担増凍結に言及しないなど、具体的中身はありませんでした。

 貧困と格差を広げた「構造改革」路線については、「一定の成果があがってきている」と継続を主張。焦点となる社会保障などの税負担については、「安定的な財源の確保」を理由に「消費税を含む税体系の抜本的改革を実現させる」と述べ、増税路線を明確に打ち出しました。

 外交面では、「平和を生み出す外交」を掲げ、積極的なアジア外交の推進を提起。朝鮮半島をめぐる問題の解決は「アジアの平和と安定に不可欠」と述べ、「北朝鮮の非核化」に向けて国際社会との連携強化を掲げました。一方で、外交路線の基本については、「日米同盟の堅持」を主張。インド洋での海上自衛隊の給油活動継続に固執し、在日米軍の再編を「着実に進めていく」と表明しました。

 自らも領収書の変造などが指摘されている「政治とカネ」をめぐる問題については、問題を指摘された場合は説明責任をつくすよう閣僚に徹底したと述べるにとどまりました。 


「希望と安心」というが中身は示されていない

志位委員長会見

写真

(写真)会見する志位和夫委員長=1日、国会内

 日本共産党の志位和夫委員長は一日、福田首相の所信表明演説に対する感想を記者団に問われ、「『希望と安心の国づくり』というが、どうやったらそういう国がつくれるのか、という中身が示されない演説だった」と述べました。

 このなかで、志位氏は「『若者に希望、お年寄りに安心を』というなら、若者から希望を奪い、お年寄りから安心を奪ったのは何だったのか、という分析と、その上に立った処方せんが必要だ」と強調。例として首相も言及した若者の非正規雇用の増大をあげ、その原因に雇用の規制緩和があると指摘しました。

 そのうえで、志位氏は日本共産党としての対応について、「今後の国会論戦の中で、一つ一つただしていきたい」と述べ、どうしたら希望と安心を取り戻せるのかを具体的に問うていく立場を表明しました。

 また志位氏は、テロ特措法に基づく自衛隊の戦争支援活動について、福田首相が「国民や国会に十分説明(する)」と述べたことに対し、「『国際貢献』『テロとのたたかい』というだけで、その説明がまったくなかった」と指摘。この問題でも、国会論戦の中で、「その是非を堂々と国民の前で問うていく」と述べました。

 一方、安倍晋三前首相が掲げた「美しい国づくり」「戦後レジーム(体制)からの脱却」という言葉が福田首相の所信表明ではなくなったことについて、「私たちが『靖国』派と呼んでいた勢力の主張が、国民の厳しい審判で挫折し、主張できなくなった」「国民の審判が動かした前向きの変化だと思う」と表明しました。


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