2007年9月24日(月)「しんぶん赤旗」
主張
自民党総裁選挙
「後継」福田氏が矛盾広げる
先の参院選挙で大敗し、異常な形で政権を投げ出した安倍晋三氏に代わる自民党の新しい総裁に、元官房長官の福田康夫氏が選ばれました。自民党の九つの派閥のうち八つから支持された福田氏は、国会議員の投票では六割以上、都道府県連代表の投票でも過半数を獲得し、対立候補の麻生太郎幹事長を下しました。
福田氏は総裁選中の発言でも、小泉・安倍政権の「構造改革」路線を支持し、アメリカに約束したインド洋での海上自衛隊の給油活動の継続も目指す対米追随のタカ派です。福田氏が後継総裁に選ばれたことは、国民との矛盾を広げることにしかなりません。
反省も路線の転換もない
今回辞任することになった安倍氏が、麻生氏や谷垣禎一氏を破って自民党の新総裁に選ばれたのは、ちょうど一年前の九月二十日でした。その翌日付の「しんぶん赤旗」は、「安倍氏『翼賛』が矛盾広げる」との主張を載せましたが、この一年間の安倍政権の足取りは、文字通りそれをうきぼりにしました。福田氏の就任にあたっても同じような見出しを掲げなければならないのは、自民党政治の深刻な危機を示すものです。
安倍氏が小泉純一郎前政権から引き継いだ「構造改革」路線は、大企業・大資産家をうるおしただけで国民に福祉の切り捨てと高負担を押し付け、貧困と格差の拡大が重大な社会問題となっています。安倍氏が推し進めた、侵略戦争肯定の「靖国」派勢力を先頭に立てた改憲タカ派路線は、国内はもちろん中国、韓国やアメリカなど海外からも、強い反発を招きました。
自民党が先の参院選で大敗し、居座りを図った安倍氏もついに辞任しなければならなくなった根本には、年金や「政治とカネ」の問題での政治不信にとどまらず、弱肉強食の「構造改革」路線や改憲タカ派路線と国民との矛盾が広がっていることがあります。
にもかかわらず総裁選の論戦を通じ、福田氏からも麻生氏からも、これまでの政治への反省も、路線を転換する発言もついに聞けませんでした。確かに福田氏は、安倍首相は参院選で大敗したとき辞任すべきだったなどとはいいましたが、路線については多少の手直しだけで変えるとはいわなかったのです。これでは福田氏に代わっても国民との矛盾が解消できるはずがありません。
ことは誰が総裁かという次元にとどまりません。安倍氏を総裁に選び、参院選で大敗したあとも退陣論を抑え、安倍氏の続投を認めたのは自民党です。安倍氏の政権投げ出しでおこなわれた総裁選も、これまでの路線を継承する二人の候補の争いでした。自民党自体に、もはや誰が総裁になろうともこれまでの政治を反省し、路線を切り替える力がなくなっているのです。文字通り自民党そのものの政治的衰退のきわみです。その自民党と連立を組み助けている公明党の責任が、改めて問われることになっているのも当然です。
解散・総選挙しかない
自民党の総裁選挙が示したのは、この自民党に任せておいては、国民が求める政治の転換がありえないことです。こうなれば、主権者・国民の手で審判を下し、新しい政治を切り開いていくしかありません。
福田氏は近く政権を発足させることでしょう。しかしその政権もやがて行き詰まるのは必至です。衆院の解散・総選挙に追い込み、自公政治に代わる新しい政治を探求していくことがますます求められます。