2007年9月20日(木)「しんぶん赤旗」

主張

ハンセン病基本法

元患者の人生をかけた願い


 ハンセン病元患者たちが、人生をかけた、最後の運動に立ちあがっています。全国に十三ある国立ハンセン病療養所の未来を切り開くために障害となっている「らい予防法の廃止に関する法律」にかわる、「ハンセン病問題基本法(案)」の制定をめざしているのです。

 提唱団体は全国ハンセン病療養所入所者協議会(全療協)です。来年の夏までに百万人を目標に国会請願署名運動をスタートさせました。

誤った隔離・絶滅政策で

 国は、一世紀にわたってハンセン病患者・元患者を強制隔離し、断種・堕胎による絶滅政策をとってきました。それは戦後、治療薬プロミンの開発によって治癒(ちゆ)可能となった状況下にあっても一九九六年の「らい予防法」廃止まで続きました。

 国の誤った強制隔離・絶滅政策は、二〇〇一年の熊本地裁判決で、憲法一三条が定める人格権の侵害にあたると断罪されました。国は、これにもとづき補償、謝罪・名誉回復、社会復帰など一連の合意を原告団などと交わしました。その柱の一つが在園保障です。こう約束しています。

 「入所者が在園を希望する場合には、その意思に反して退所、転園させることなく、終生の在園を保障するとともに、社会の中で生活するのと遜色(そんしょく)のない水準を確保するため、入所者の生活環境及び医療の整備をおこなう」

 この約束にふさわしい十三療養所の将来はどうあるべきか。各施設の入所者自治会や全療協は、療養所が地域から孤立したものではなく、地域の医療・介護施設として、またハンセン病問題を考える歴史・資料館など特徴を生かして社会に開かれた施設にすべきだと主張しています。

 九六年の「らい予防法」廃止のさいには全国の入所者は五千人でした。現在は三千人を切り、平均年齢は七十九歳となっています。十年たてば千人を切ってしまうのではないかと心配されています。

 入所者には、いまなお続く差別と偏見、断種・堕胎による絶滅政策によって、頼ることのできる親族、子どもがいません。「国は最後の一人まで面倒をみるというが、最後の一人になる前に死にたい」と語る入所者もいます。いつまでもこんな思いをさせてはなりません。

 入所者の願いは「地域の人たちと社会の一員として安心して暮らしたい」ということにあります。これを阻んでいるのが国の姿勢です。「らい予防法」廃止法二条の“国立療養所は入所するものに必要な療養をおこなう”との規定を理由にして、地域への開放を拒んでいます。隔離政策の継続だと、批判の声が上がるのは当然です。

 「それなら法律を変えよう」と入所者たちが立ちあがったのが今度の運動です。「ハンセン病問題基本法」制定によって療養所の将来について関係者の意見を尊重し地域・国民のための医療・介護施設などとして広く開放・発展させようというのです。元患者の人たちの切実な願いです。

政府と国会の責任で

 日本共産党は入所者の願いを反映する療養所の実現のため「ハンセン病基本法」の実現に力を尽くすと約束、政府に実行を申し入れました。

 先に東京都内で開かれた集会では、日本共産党はじめ自民党、民主党、社民党の国会議員が基本法制定を約束しました。

 「生きてきてよかった」と元患者のみなさんが心からいえるよう、政府と国会の責任で約束を実行に移すべきときです。


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