2007年9月12日(水)「しんぶん赤旗」

戦争違法化に向けた国際法の発展とは?


 〈問い〉 先日の本欄「パール判事とは」の中に「戦争違法化に向けた国際法の発展」という言葉に出合いましたが、どういう意味ですか?(東京・一読者)

 〈答え〉 憲法や条約に戦争の制限が規定されるようになっていくのは、非戦闘員をまきこむ大量殺りくとなった近現代の戦争を通じてです。

 「侵略戦争の禁止規定」の端緒は、フランス革命直後の1791年に制定されたフランス91年憲法の「征服をおこなう目的でいかなる戦争を企図することも放棄」という規定です。同じころ、カントは『永遠平和のために』(1795年)で、常備軍の撤廃を唱えました。

 『戦争と平和』の著者トルストイも参加したクリミア戦争(1854〜56年)などの悲劇を経て、赤十字が生まれ、戦争をすぐにはなくせなくても、非人道的な武器使用などを規制しようという動きがまず生まれます。最初の政府間の国際平和会議となったハーグ平和会議(第1回・1899年、第2回・1907年)がそれで、常設国際仲裁裁判所(現在の国際司法裁判所)、ハーグ陸戦法規、毒ガスやダムダム弾の使用禁止などが合意されます。ハーグ陸戦法規は、略奪・私有財産没収・非武装都市の攻撃の禁止など、今日にも生きている規定です。

 飛行機や戦車など近代兵器の使用による国家総力戦となって1千万人以上ともいわれる戦死者をだした第1次世界大戦を通じて、戦争を許さないルールをつくろうという動きは格段に強くなります。「無賠償・無併合」の即時戦争終結を主張したレーニン指導下のソビエト政府によって「平和についての布告」(17年)がだされ、それに対応して米大統領ウィルソンの「民族自決権確立、戦争による領土獲得禁止、国際組織の創設」などの14カ条提案(18年)がおこなわれました。

 そして、20年には国際連盟がつくられます。国際連盟規約は前文で締約国が「戦争に訴えざるの義務を受諾」するとしています。しかし、国際連盟規約は抜け道が多く、本格的な戦争の違法化の画期となるのはその後のパリ不戦条約(28年)です。

 同条約第1条は「締約国は国際紛争の解決のため、戦争に訴えることを非とし、かつその相互関係において、国家の政策の手段としての戦争を放棄することを、その各自の人民の名において厳粛に宣言する」と明確にうたいました。

 人類史上かつてない5千5百万人といわれる犠牲者をだした第2次世界大戦にたって、国際社会は戦争を許さない決意のもとに国際連合をつくりました。

 国連憲章は、すべての加盟国は「国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない」(第2条3項)「武力による威嚇又は武力の行使を、いかなる国の領土保全又は政治的独立に対するものも、また、国際連合の目的と両立しない他のいかなる方法によるものも慎まなければならない」(同4項)と規定、これが現在の国際的なルールの基本です。

 “戦争放棄と武力不行使、さらに、戦力不保持、交戦権を認めず”とした日本国憲法第9条の精神は、これと合致し、さらに徹底させたものです。

(喜)

 〔2007・9・12(水)〕


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