2007年9月12日(水)「しんぶん赤旗」

米艦補給 継続へ新法案

海自派兵に固執

政府が下旬提出 国会承認規定外す


 政府・与党は、テロ特措法の延長法案の提出に代えて、海上自衛隊による補給活動継続のための新法案を臨時国会に提出する方針を固めました。与謝野馨官房長官は十一日の記者会見で、衆参両院の予算委員会質疑が終わる九月下旬にも新法案を提出すべく準備をすすめていることを明らかにしました。


 新法案は、自衛隊の活動内容を給油と給水に限定し、テロ特措法で定める派兵命令後二十日以内の国会事後承認の規定を外す方向です。

 海上自衛隊の補給艦や護衛艦によるインド洋での米英軍などへの支援の根拠法となっているテロ特措法は、十一月一日に期限切れとなり、失効後は国会審議が続けられません。

 安倍晋三首相は豪州訪問中の九日、自衛隊の活動継続をブッシュ米大統領らに約束し、それを「国際的な公約」だとして「職を賭して」とりくむ姿勢を表明。これを受けて政府・与党は、参院で与野党の議席が逆転したもとで、期限切れ前の成立が困難となっているテロ特措法の延長法案に代えて新法案提出の方針に転換したものです。また、国会承認の規定を残せば、参院で承認を得られず、補給活動は中止に追い込まれかねません。このため、同規定を外し、国会の意思を無視しようというねらいがあります。

 十一日の閣議後の会見で閣僚らは、新法案から国会承認規定を排除することについて、「シビリアンコントロール(文民統制)上まったく問題はない」(高村正彦防衛相)、「法案の審議と賛否そのものが、事前、事後の承認を包括したものだ」(町村信孝外相)などと正当化しています。

 新法案提出の動きは、何がなんでも海自の米軍支援継続を図ろうという姿勢を示すものです。政府・与党は、新法案が参院で否決されても、衆院で三分の二の賛成による再議決を強行しようとねらっています。

 与党は、安倍首相がニューヨークで開かれる国連総会に出発する前の二十一日に新法案を閣議決定。十月第一週までに衆院審議入り、第二週には衆院通過―参院審議入りとのスケジュールを描いています。

 インド洋への自衛隊派兵の延長には日本共産党のほか民主、社民両党も反対しています。


「戦争支援」変わらず

解説

テロ特措法は、給油・給水以外に、修理・整備や医療などの活動も定めていますが、政府・与党は、新法案に盛り込む活動について、海自が継続している給油・給水に限定する方向です。それでも、「対テロ報復戦争」への軍事支援というテロ特措法の本質が変わるわけではありません。

 世論調査でも、海自の活動継続に対し、反対(39%)が賛成(29%)を上回っています(「読売」十一日付)。

 米軍主導の「対テロ報復戦争」は、テロ問題を解決するどころか、逆に国際テロリズムの温床を拡大してしまいました。新法案は、「戦争でテロはなくせない」という、この六年間が示した現実から目を背けるものでしかありません。(田中一郎)

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