2007年8月1日(水)「しんぶん赤旗」

主張

「慰安婦」決議

安倍外交では米国からも孤立


 米下院本会議が、「従軍慰安婦」問題で、日本の首相に公式の謝罪と歴史的責任の受け入れを求めた決議を異論のでないほぼ満場一致で採択しました。下院外交委員会につづき本会議としてはじめての決議です。

 法的拘束力はないとはいえ、政治的意味は重大です。下院定数の三分の一を超える百六十七人が共同提案者となり、ほぼ満場一致で決議を採択したことは、安倍外交にとっても大きな衝撃です。「政府の立場は変わらない」(塩崎恭久内閣官房長官)とこれまでと同じように無視し続けるのでは、日米関係にも大きな影響をおよぼし、アメリカからも孤立する事態になりかねません。

米議会への「脅迫」

 下院本会議が決議を採択したのは、日本の「官民の関係者」が、「謝罪と反省を表明した一九九三年の河野洋平内閣官房長官の慰安婦にかんする声明を薄め、無効にしようとする願望を示している」からです。安倍首相らは「慰安婦」問題は「もともとなかった」「河野談話は間違っている」などといっています。こうした侵略戦争を正当化する「靖国」派勢力の、河野談話を空文化する策動に米下院が危機感をもち決議を採択したのはあきらかです。安倍首相がこの決議の意味をしっかり受け止めないと米議会との矛盾をいっそう大きくするばかりです。

 委員会段階よりも共同提案者が大幅に増え、本会議がほぼ満場一致で決議を採択したのは、安倍首相が日本軍の「強制性」を否定し続けていることへの反発の大きさを示しています。

 決議がいう「日本政府による強制的な軍の売春」という事実は戦後国際社会が再出発にあたって確定済みの問題です。それは侵略戦争と植民地支配を二度と許さないという政治原則の土台になっています。安倍首相ら「靖国」派が「日本軍の強制はなかった」というのは、戦後政治の土台をくつがえすことです。国際社会の一員として存在しようとする限り、歴史の歯車を逆にまわすようなことはすべきではありません。

 安倍首相は四月の日米首脳会談で、ブッシュ大統領や議会指導者に「河野談話」の継承と「おわび」を表明してみせながらも、「強制性を裏付ける証拠はなかった」という肝心の発言を撤回していません。六月の下院外交委員会の「慰安婦」決議もこの立場で無視を決め込みました。一方で「靖国」派は、自民、民主両党議員が決議阻止の意見広告を米紙に掲載し、日本会議国会議員懇談会の会長である平沼赳夫氏と自民、民主両党有志議員は河野談話を「歴史事実に基づかない」として「歴史的検証」を求める声明までだしています。

 そのうえ安倍首相は、加藤良三駐米大使に「決議が採択されれば永続的で有害な影響を与える」と書いた書簡をペロシ下院議長ら下院の中心メンバーに送付させました。こうした脅迫的手段に訴えるやり方が反発を買ったのは当然です。「靖国」派の安倍政権に正常な外交を期待することができないのはあきらかです。

歴史的責任を認めよ

 戦前の天皇制政府と軍部が侵略と植民地支配を進めるなかで、海外の女性を日本軍の性的奴隷にしたことは政府の調査資料であきらかになっている事実です。海外で再び戦争する道を進むために、旧日本軍の行動を正当化するなど言語道断です。

 日本軍の強制があった歴史的事実を認め、安倍政権が公的に謝罪してこそ、日本は国際社会とまともな付き合いができることになります。



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