2007年6月14日(木)「しんぶん赤旗」

主張

官民人材センター

癒着勢力が笑う“天下り天国”


 国家公務員法の改定案の審議が参院内閣委員会で始まりました。

 法案は「天下り」の事前規制をなくし、「官民人材交流センター」という名の「天下りセンター」をつくって、天下りを自由化する本末転倒の大改悪です。

 衆参の委員会審議で、その実態が浮き彫りになっています。

審議すればするほど

 担当大臣の渡辺喜美行革相は「各省庁の予算や権限と切り離された」再就職あっせんセンターをつくり、「押し付け的」天下りをなくすとのべています。

 天下りは「押し付け」だから良くないというのは問題のすり替えです。天下りには官僚と財界の双方の「利益」の一致があり、財界にとって「利用価値は十分ある」(奥田碩・前日本経団連会長)からこそ、癒着・談合がまん延しています。

 企業から「こういう人物を採りたい」と要請があった場合、法案には、その天下りを妨げる定めは「特にない」と政府側が答弁しています。日本共産党の吉井英勝衆院議員が追及したように、企業が望んだ形にすれば「押し付け」ではないという抜け穴です。職員が退職後に、センターを利用しないで自ら働きかけて職務と密接な企業に天下りをすることも、法案には「規制がない」と政府が認めています。

 こういうケースを現行法は原則として禁止しています。国家公務員法の一〇三条「私企業からの隔離」は、離職後二年間は仕事と密接な営利企業に再就職してはならない、と明記しています。ところが法案は、この条文を削除してしまいました。

 法案は天下りの規制を強化するどころか原則禁止から原則自由へ、百八十度後ろを向く天下り自由化法にほかならないことが、審議を通じて明白になっています。

 特殊法人からの天下りについて渡辺行革相は、法案は「国家公務員組織ではない組織の天下りを禁止するものではない」と答弁しました。法案には特殊法人からの天下りに何の規制もないし、天下り先を転々と渡り歩いて巨額の退職金をせしめる「渡り」の禁止もありません。

 渡辺行革相は、省庁と公務員の再就職あっせんを「切り離す」ことが眼目だと強調してきました。

 この点も、安倍首相の「機能する」センターにせよとの指示で抜け穴をつくっています。再就職支援を円滑に「機能」させるという口実で、法案には、センター長が職員の出身省庁に意見を求めることができる規定をもぐりこませています。省庁の人事当局がセンターに関与できる仕組みです。

 審議すればするほど「天下り根絶センターだ」という渡辺行革相の説明が成り立たなくなっています。

 それもそのはずです。もともと安倍首相が施政方針演説で「公務員制度改革」の第一にあげていたのは、「官民の人事交流」でした。渡辺行革相は「人事交流も徹底して進めていく場合には、むしろ天下り奨励、天上がり奨励ということになる」と明言しています。

廃案以外にない

 緑資源機構や道路公団などの事件で「官民の癒着」が大問題になっているのに、「官民の人事交流」を大原則にすえるのは完全に転倒しています。「天下りをなくせ」という世論を踏みにじるやり方に、陰で笑う癒着勢力の姿が浮かびます。

 財界の要求に従って官民の垣根を引き下げ、癒着と腐敗の構造をさらに深刻にする法案は廃案にする以外にありません。


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