2007年6月7日(木)「しんぶん赤旗」

ゲートキーパー法とは?


 〈問い〉 4月から施行された「ゲートキーパー法」とはどんなものですか?(神奈川・一読者)

 〈答え〉 犯罪からの収益の移転とテロ資金の供与の防止対策を目的として、マネーロンダリング(資金洗浄)などの疑いがある行為を当局に通報することを罰則で義務づける「犯罪による収益の移転防止に関する法律」が、本年4月から施行されました。この法律をゲートキーパー(門番)法といいます。

 この法律は、すでに本人確認などマネーロンダリング防止策がとられている金融機関ばかりでなく、クレジットカード会社、不動産業者、貴金属店、電話秘書サービス会社、弁護士、司法書士、公認会計士、税理士など顧客の個人情報を知りうる43職種を対象として、これらの職種で(1)本人確認(2)疑わしい取引を見つけたら監督官庁へ届け出る―ことを義務づけています(ただし、反対が強かった「士業」と呼ばれる5業種―弁護士、司法書士、行政書士、公認会計士、税理士は届け出義務が除外されました)。この届け出については依頼者やお客には知らせることは禁止されます。義務違反には罰則があり、警察は届け出などに違反があると考えたら、裁判所の令状なしで、対象業者に立ち入り調査などもできます。

 そして、届け出られた情報は監督官庁から警察組織である国家公安委員会に流され、情報として蓄積され、さらに警察の捜査に使われることになります。

 金融機関ですでに行われている「疑わしい取引」の届け出では、犯罪による収益と疑える場合だけでなく、「多額の現金送金」など犯罪と関係ないものも含まれています。昨年、「疑わしい取引」として届け出られたうち99・85%は犯罪でない取引でした。膨大な取引情報を罰則で届け出を強要し、個人情報を警察の監視下におくものといわなければなりません。

 そこで、この法律は「国民同士が監視し合う監視社会をつくる」「警察に個人情報が蓄積され、危険だ」と反対の声があがりました。日本弁護士連合会は、法案が弁護士の守秘義務を侵害し、依頼者との信頼関係を根底から破壊すると強く反対しました。

 この法律は、個人のプライバシーなど基本的人権を不当に侵害する危険がある問題の多い法律です。マネーロンダリング、テロ資金対策を口実に個人の権利の侵害や人権のはく奪は認められません。悪用されないよう、その運用実態を監視していくことが必要です。(小)

〔2007・6・7(木)〕


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