2007年6月4日(月)「しんぶん赤旗」

反戦イラク帰還兵に

米海兵隊が脅し

“懲戒”で地位格下げ示唆

“表現の自由守れ”と抗議


 イラク帰還兵でつくる反戦団体「反戦イラク退役軍人会」(IVAW)で活動する元兵士に対し、海兵隊が懲戒処分をちらつかせています。帰還兵らは「われわれを沈黙させることはできない」と不当な圧力に抗議。全米最大の退役軍人団体も「表現の自由を支持する」と海兵隊の行きすぎを批判しました。(ワシントン=鎌塚由美)


 海兵隊から圧力を受けているのは、ワシントンを拠点に反戦活動を続けるアダム・コケッシュ氏(25)と、米軍のイラク即時撤退を求める現役兵士の「訴え」への賛同署名(一日現在、千九百七十一人が署名)活動を進めてきたリアム・マッデン氏(22)です。

 両氏とも「名誉除隊」で退役し、動員があれば再呼集される「個人即応予備役」の立場にあります。動員されない限りは文民で、軍規の対象外です。

 IVAWは三月、イラク開戦四年にあたってワシントン市内で模擬「戦闘作戦」を実施。帰還兵は迷彩服を着て、銃を構えるポーズで街中を「パトロール」し、市民に銃口を向けるイラク戦争の実態を知らせようとしました。この様子は、国外でも報道されました。

 海兵隊当局は、軍の許可のない軍服着用は懲戒の対象だと除隊の地位を格下げする可能性を示唆しました。格下げされると、退役軍人に与えられる医療福祉が制限され、大学奨学金を自力で返済しなければならなくなります。犯罪で有罪となった場合は格下げされますが、反戦行動が問われるのはこれまでなかったことです。

 コケッシュ氏は一日、ミズーリ州で四日に開かれる軍規公聴会を前にワシントンで記者会見し、「個人即応予備役」は文民として「表現の自由が保障されている」と強調。「イラク戦争が正義だと主張する人々は、なぜ真実をおそれるのか。なぜ帰還兵を黙らせる必要があるのか」と訴えました。

 IVAWのガレット・ラッペンハーゲン議長は、「われわれは声をあげ続ける」と強調。「イラクに送られた兵士たちは、報道されることもなく死に絶え、意見を持って帰ってくることも許されないのか」と兵士たちを沈黙させようとする軍を批判しました。

 最大の退役軍人団体「対外戦争退役軍人会」(VFW)のクルピウス全国司令官(会長に相当)は一日に声明を発表。コケッシュ、マッデン両氏の反戦の意見について、「同意しないかもしれないが、彼らの意見を述べる権利を私はいつでも擁護する」と表明。「イラクでわれわれが導入しようとしている同じ権利を、同胞の米国人が行使しようとするのを黙らせたり罰したりするとはどういうことか」と指摘し、「海兵隊は常識を働かせ、この問題に終止符を打たなくてはならない」と主張しました。



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