2007年5月30日(水)「しんぶん赤旗」

主張

労働関連法案

これでは貧困を打開できない


 長時間労働の抑制や均等待遇、全国一律最低賃金制など人間らしく働けるルールの確立は、貧困と格差を打開するために不可欠の課題です。安倍内閣が国会に提出している労働関連三法案は、これらの願いにこたえていません。

権利の拡大を攻撃

 労働基準法改定案は、時間外労働の割増率の引き上げを盛り込んでいますが、長時間労働を是正するために最も肝心な残業時間そのものを法的に規制していません。

 最低賃金法改定案も、最低賃金の大幅引き上げにつながる保証はありません。全国平均で時給六百七十三円というあまりにも低すぎる最低賃金を、時給千円を目標に抜本的に引き上げ、全国一律の制度として確立することは国民の切実な願いです。しかし、最低賃金法改定案は、「全国一律」を盛り込まず、政府は、最低賃金の大幅引き上げを否定する答弁を繰り返しています。

 新たにつくられる労働契約法案は、労働契約の締結や変更について「労働者と使用者が対等な立場で合意する」ことを原則としています。ところが、使用者が一方的に定める就業規則の変更が、労働者にとって不利益であっても、労働者の合意は必要ないとしています。一方で、労働契約をめぐって最も必要な非正規労働者の雇用を安定させる「雇い止め規制」なども盛り込まれていません。

 政府が、労働法改定案を提出しながら、貧困と格差を打開する抜本的な方向にならないのは、財界の要求にこたえて労働分野での規制をなくし、よりいっそうの働くルールの破壊をねらっているからです。

 政府の規制改革会議の労働専門グループが二十一日公表した意見書は、労働者の権利を強めるという考え方を「誤っている」とのべています(「脱格差と活力をもたらす労働市場へ―労働法制の抜本的見直しを」)。

 意見書は、最低賃金の引き上げそれ自体を否定しているのをはじめ、不当な解雇であっても金銭を払えば解雇できる制度や、派遣労働における業種の拡大や派遣期間の制限の撤廃なども盛り込んでいます。人間らしく働くルールの確立をねがう人々への挑戦状ともいうべきものです。

 実際、労働三法案の審議が始まった衆院本会議で、日本共産党の笠井亮議員が、安倍内閣として意見書の方向を「とらない」よう求めたのにたいし、塩崎官房長官は、とらないとはいいませんでした。

 もともと、労働三法案の今国会提出をめぐっても、事務・管理・販売などのホワイトカラー労働者の労働時間規制の適用除外(エグゼンプション)が議論になりました。「残業代ゼロ法案」という批判が国民から巻き起こり、政府は今国会提出の法案に盛り込むことを断念しました。

 しかし、塩崎官房長官が「今後とも検討していきたい」と答弁したように、安倍内閣がホワイトカラー・エグゼンプションの導入をあきらめたわけではありません。労働三法案にとどまらず、労働者の暮らしと福祉を根こそぎ奪う攻撃を許さない世論と運動を広げることが急務です。

問われる規制緩和推進

 通常国会の会期はあと一カ月足らずになりましたが、貧困と格差の問題が争点となる参議院選挙では、労働者・国民を応援する政党がどの党かが鋭く問われます。

 人間らしく働くルールの確立を求め、サービス残業の根絶でも実績のある日本共産党か、労働法制の規制緩和を進めてきた自民党、公明党、民主党かの選択です。


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