2007年5月21日(月)「しんぶん赤旗」

英の貧困・格差 依然 高水準

労働党10年 保守党18年と変わらず


 【ロンドン=岡崎衆史】ブレア労働党政権の十年を経た英国民の格差は、歴史的な拡大を示したサッチャー保守党政権末期とほぼ同水準―。英国家統計局が十七日に発表した所得格差に関する報告が英国社会に衝撃を与えています。


写真

(写真)ロンドン・トラファルガー広場での1日のメーデーに参加した英最大労組ユナイトの労働者(岡崎衆史撮影)

 統計局の報告は、間接税が税による格差是正を妨げているとし、日本の消費税にあたる付加価値税の問題点も指摘しています。野党やメディアからは、「公正な社会」づくりを掲げながら公約を果たせなかったブレア政権への批判と、六月末に発足予定のブラウン財務相を首班とする新政権に格差是正を求める声が高まっています。

 報告によると、二〇〇五―〇六年のジニ係数(一に近づくほど不平等)は〇・三四で、一九七九―九〇年のサッチャー政権による新自由主義政策で拡大した格差とほぼ変わらないことが分かりました。

再分配後も

 ジニ係数は七九年に〇・二七だったのが、九〇年には〇・三六に拡大。その後いったん減少傾向に転じたものの、本格的減少には至らず、ブレア政権発足時の九七―九八年は〇・三四。そのまま縮小されずに今日に至りました。統計局は「格差は歴史的高水準のままだ。八〇年代後半の格差の急激な拡大は転換されなかった」と結論付けました。

 所得に応じて英国の家計を五つに区分し、最も富裕な家計と最も貧しい家計の平均年間所得を比べた場合、〇五―〇六年の最富裕世帯の所得は、六万八千七百ポンド(約千六百四十万円)で、最貧世帯の約十六倍。再分配後も、最富裕層の所得は四万九千三百二十ポンド(約千百八十万円)で、最貧世帯の四倍近くでした。

是正を要求

 一方で統計局は、所得税などの直接税支払額が、最富裕層の所得の25%、最貧層の9%を占めているのに対し、間接税は逆に、最貧層の所得の27%、最富裕層の11%を占めていると指摘。「税システム全体としては、格差に対して、給付金に比べて非常に小さな影響しか与えていない」として、直接税による格差是正効果を逆進税の付加価値税(日本の消費税に相当)が相殺していることを明らかにしました。英国の付加価値税は17・5%(光熱費などは5%、食料品、新聞、書籍などは0%)です。

 報告について英ガーディアン紙は十八日、「労働党は貧富の格差縮小に失敗」と報道。インディペンデント紙は十九日付社説で、「不平等に対処するのが政府の仕事だ」と述べ、新政府に格差是正を要求しました。

 野党の自由民主党は、「労働党政権の十年を経たにもかかわらず、保守党の十八年と同じ不平等が存在するというのは恥ずべきことだ」と批判しました。


 ジニ係数 所得や資産の格差の広がり具合を表す際に用いられる指標で、イタリアの数理統計学者ジニが1932年に考案した指数。0から1までの値をとり、0に近いほど所得格差が小さく、1に近いほど所得格差が大きいことを示します。


もどる
日本共産党ホーム「しんぶん赤旗」ご利用にあたって
(c)日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 TEL 03-3403-6111  FAX 03-5474-8358 Mail info@jcp.or.jp