2007年5月19日(土)「しんぶん赤旗」
交際相手厚遇問題
世銀総裁が辞任発表
指名の米政府に打撃
【ワシントン=山崎伸治】交際相手の女性職員を厚遇していた問題で批判をうけていた世界銀行のウルフォウィッツ総裁が六月三十日付で辞任することが十七日決まりました。同総裁は第一期ブッシュ政権の国防副長官としてイラク侵略戦争を主導したネオコン(新保守主義)の重鎮。こうした人物を世界銀行に送り込んだブッシュ大統領の姿勢がかねてから批判されてきただけに、辞任表明はブッシュ政権にとって少なくない打撃です。
辞任は、協議を続けてきた世銀理事会と同氏が十七日午後、それぞれ声明で発表しました。世銀の総裁が不祥事で辞任するのは、一九四六年に初代総裁が就任以来初めてのことです。
理事会の声明によると、不祥事を調べた特別調査委員会の報告書を受け、この三日間、ウルフォウィッツ氏と協議。同氏が「倫理的で世銀の利益となるよう誠実に行動した」と表明し、理事会がそれを認めたことを同氏が評価したうえで辞任を申し入れ、承認されました。解任とはせず、同氏の面目に配慮しました。
ウルフォウィッツ氏は声明で「新しい指導部のもとで任務が実施されることが、世銀が奉仕する人たちの最善の利益となると結論付けた」と述べました。
ブッシュ大統領は同日午前、英国のブレア首相との会談後の記者会見で、ウルフォウィッツ氏が辞任に追い込まれる状況になったことについて「残念だ」と表明。正式発表を受けてホワイトハウスのフラット報道官は「大統領はしぶしぶ決断を受け入れた」と述べ、近く後任を発表するだろうと発表しました。
世銀の総裁は米政府が指名することが慣例となっており、米メディアは後任として、ポールソン米財務長官やゼーリック前米国務副長官らの名前をあげています。また当面は総裁代行を置くとの観測もあります。
イラク戦争主導 ネオコンの凋落
解説
ウルフォウィッツ氏は第一期ブッシュ政権で国防副長官に就任。政権内の「新保守主義(ネオコン)」の重鎮といわれ、イラク戦争を主導しました。第二期政権で、〇五年三月に世銀総裁に指名されました。
イラク戦争を推進した経歴から、同氏の指名には欧州諸国の反発がありましたが、ブッシュ政権の強い後押しで同年六月に就任しました。
不祥事がきっかけとはいえ、今回辞任に追い込まれた背景には、世銀の運営をめぐる内部からの反発に加え、イラク戦争を推進した人物に対する国際的な批判があり、同氏を総裁に指名したブッシュ氏の国際的な孤立を際立たせるものとなりました。
またネオコンは、反対勢力の排除のためには「自由・民主主義」の確保の名目での先制攻撃を辞さないと主張。ラムズフェルド国防長官やファイス国防次官とともに一時はブッシュ政権の中枢を占めました。しかしイラク戦争の破たんから相次いで政権を離れました。その代表格の国際舞台からの退場は、ネオコンの政治的凋落(ちょうらく)ぶりを如実に示しました。
今回、辞任のきっかけとなった不祥事は今年三月末に発覚。交際相手である女性職員を米国務省に出向させる際に便宜を図ったことが、世銀の規則に反すると認定されました。ウルフォウィッツ氏は当初から「中傷だ」と主張し、辞任を拒否。ブッシュ氏も同氏に対する支持を繰り返し表明していました。
ところが欧州ことにドイツが同氏の辞任を強く要求。そうした各国の批判を背景に、特別調査委員会は今月十四日、続投の可否の判断を世銀理事会に求めました。十八日付の米紙ワシントン・ポストによると、ポールソン氏が今週、各国の財務相に支援を求めたものの説得しきれず、ホワイトハウスが辞任を受け入れたといいます。(ワシントン=山崎伸治)

