2007年4月30日(月)「しんぶん赤旗」

主張

道州制提言

地方自治破壊の加速許されない


 自民・公明の連立政権と財界が推進してきた道州制導入の策動が本格化しています。

 日本経団連は、今年一月の「経団連新ビジョン」(御手洗ビジョン)で道州制導入を提唱したのに続き、三月二十八日には「道州制の導入に向けた第一次提言―究極の構造改革を目指して」を発表しました。

 安倍首相は、就任直後から「道州制の本格的な導入に向けた『道州制ビジョン』の策定」(所信表明演説、昨年九月)をかかげ、閣内に初めて道州制担当大臣を置いています。今年三月からは、「道州制ビジョン懇談会」が各地域ブロックごとに意見交換会を予定しています。

「究極の構造改革」狙う

 日本経団連の「提言」の特徴は、その副題にかかげるように、道州制の導入を「究極の構造改革」と位置づけ、導入のねらいをきわめて露骨に打ち出していることです。

 「提言」では、道州制の導入の意義について、「国においては外交・防衛など国家安全保障や司法を担当するとともに国家としての競争力を重視した政策を重点的に推進」できるようにすること、「(地方においては)グローバルな視点から成長戦略を練り、道州自体が国際的な競争に挑み、それを通じて経済発展を実現」できるようにすることをあげています。

 道州制は単に「都道府県の再編」ではなく、国の仕事を外交・軍事・司法などに限定し、社会保障や福祉などの行政サービスは地方に押しつけ自立自助の名で住民負担に切り替えることで、自治体を財界・大企業のための開発政策や産業政策の道具に変えてしまおうというのです。

 財界「提言」のもう一つの特徴は、「道州制の導入実現までの工程表」をかかげ、「二〇一三年までに道州制導入関連法の制定」を目指して、「政府のイニシアティブ」や「国民の意識改革」などの戦略的な道筋をえがいていることです。〇八年秋までに「憲法を含む法体系の整備」などを盛り込んだ第二次提言をまとめるとしています。政府の検討もこうした「工程表」に沿ったものです。

 財界「提言」が「究極の構造改革」というように、道州制の導入は、「統治機構の抜本的な改革」であり、それを許すなら、憲法の地方自治原則は根底から破壊されてしまいます。道州制導入は、文字通り憲法改悪など安倍首相がめざす「戦後レジーム(体制)」の見直しと一体です。

 もともと道州制の導入は、自治体や住民が求めたものではありません。政府や財界が地方自治体再編を上から押し付けようとするやり方は、地方自治の原則に反します。今年一月の全国知事会でおこなわれた「道州制に関する基本的考え方」をめぐる議論では、「道州制導入を前提にすべきでない。国民的議論が欠けている」との慎重論が続出しました。

住民に身近な自治体を

 地方自治体の本来の役割は、「住民の福祉と暮らしをまもる」ことです。住民の多様な要求にきめ細かくこたえ、住民に身近で、住民が直接参加して意思決定できる制度でこそ、地方自治は成り立ちます。

 安倍自公政権や財界の勝手な理屈で都道府県を廃止し、広大な道州にすれば、今でさえ住民に縁遠いといわれる都道府県がますます住民から遠くなります。

 日本共産党は、地方自治体と住民の意思を踏みにじる市町村合併の押し付けや道州制導入の策動に強く反対します。「住民こそ主人公」の立場から、地方自治体が本来の役割を果たせるよう力をつくします。


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