2007年4月27日(金)「しんぶん赤旗」

主張

裏金最終報告

日本球界再生の第一歩に


 プロ野球の西武球団が裏金問題で立ち上げた調査委員会(委員長・池井優慶大名誉教授)が最終報告書をまとめました。四人の外部有識者による一カ月余の調査でしたが、日本球界の暗部を照らし出しました。

常態化する不正行為

 調査で判明した実態は深刻です。西武は一九七八年の球団創立以来、アマチュア七選手に対して合計七千五百万円近い不正支給を行い、のべ百七十人のアマ関係者に一人当たり十万―一千万円の謝礼金を払っていました。また、球団間で申し合わせた契約金の最高標準額をこえた選手が十五人いて、約十二億円の違反金があったこともわかりました。こうした不正行為のすべてが、管理職の決裁を得ていたものでした。

 この内容は、有力アマ選手をめぐる不正な金銭の授受が常態化していたことを示しています。

 「報告」は「トップから末端に至るまで社会のルールを尊重する意識が希薄だった」「最低限の企業の社会的責任すらないがしろにされてきた」と球団の体質をきびしく批判しました。そして再発防止のために、コンプライアンス(法令順守)体制の充実強化や、公正で透明な経営などを宣言した行動理念「新生ライオンズ憲章」の策定を提言しました。

 池井委員長は記者会見で「いかに立派なルールや憲章をつくろうと、それを守ろうとするモラルが欠如している限り、改善されない」と指摘しました。「報告」と、それに携わった委員たちの思いを、西武はもちろん、球界全体が重く受けとめるべきでしょう。不正を許さない意識を確立するとともに、その土壌となっている制度の改革も必要です。

 実際、裏金は一球団の問題ではありません。二〇〇四年には大学投手への金銭供与が発覚し、三球団のオーナーが辞任しています。今回の調査過程でも、西武のスカウトが「他球団でも同じようなことをやっているのではないか。後れをとるわけにはいかない」との思いから不正行為におよんだと話しています。今月十一日には、横浜球団も逆指名でとった投手に申し合わせ違反の五億三千万円の契約金を払っていた事実を認めました。このときの会見で横浜の球団社長は「(その投手を)とるには、これくらいは仕方なかったのかと思った」ともらしています。

 いま週刊誌をはじめマスメディアでは、どの選手にいくらの裏金が渡ったかが、取りざたされています。選手もこれでは野球に集中できないでしょう。選手会労組も急きょ臨時総会を開くことを決めました。

 アマ球界も揺れています。金品の授受を禁じた日本学生野球憲章は、現場では有名無実でした。さらに、問題は特待生制度に波及し、高校野球連盟はその対応に大わらわです。

スポーツ組織として

 「報告」は、日本社会に根づいている野球の価値を認める一方で、調査結果が全国のファンの信頼を大きく裏切ることになり、いまの球界が成り立たなくなるのではないか、という戸惑いや悩みもあったといいます。しかし、事実を明らかにすることによって、「球団と選手たちが、みずからの努力と力でこの球団を生まれ変わらせ、球界の発展に努めてもらうことを期待する」としています。これはいま、すべての球団や関係者に突きつけられた課題です。

 日本球界は、今回の裏金問題を、フェアプレーを信条としたスポーツ組織として再生するための機会にしなければいけません。「報告」を生かすことは、その第一歩です。


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