2007年4月27日(金)「しんぶん赤旗」

改憲手続き法案

与党の答弁不能

最低投票率の設定 なぜ「憲法上の疑義」?

運動の規制 なぜ公務員・教育者に限定?


 重大局面を迎えた改憲手続き法案の参院審議で、日本共産党の追及によって法案の根幹にかかわる二つの問題で、提案者が答弁不能に陥る事態が生まれています。

根拠も示さず

 一つは、一定の投票率を超えないと国民投票そのものを無効とみなす最低投票率の問題です。与党案には、この規定がなく、有権者の一割台、二割台の賛成でも改憲案が承認される不公正な仕組みとなっています。

 地方公聴会では、与党推薦の公述人からも「せめて40―50%の(最低投票率の)定めが必要」との意見が出るほど。世論調査でも八割近くの人が「必要」と答えています(「朝日」十七日付)。

 ところが、与党は、「憲法改正手続きを定めた憲法九六条に書いていない要件を加えることは、憲法上疑義がある」として導入を拒んでいます。

 日本共産党の仁比聡平議員は、一方では九六条に書いていない「両院協議会」を改憲手続き法案に盛り込みながら、他方では憲法に書いていないとして最低投票率を拒否するのは、「ご都合主義だ」と追及(十九日の参院憲法調査特別委)。提案者の保岡興治衆院議員は「詳しい理由は事務局に聞いていただければありがたい」としどろもどろになり、たびたび審議が中断する事態になりました。

 しかも、仁比氏が「憲法上疑義があるというなら根拠を示せ」と迫ったのに対し、「疑義がないという学説も承知しているが、われわれは疑義があると考えている」(自民党・葉梨康弘衆院議員)というだけ。ついには「最低投票率をもうけて国民の投票率を上げるのは好ましくない」などと的外れの答弁もとび出し、憲法上の根拠を示せませんでした。

 仁比氏は「特段の憲法論上の根拠も示されずに、疑義があるというのはおかしい、撤回すべきだ」と指摘しました。

「中立」言うが

 もう一つは、公務員・教育者に対して「地位利用」を口実に国民投票運動を制限している問題です。

 公務員、教育者は約五百万人。もっとも自由に意見表明すべき国民投票で、それだけの規模の主権者が規制を加えられる重大問題です。

 提案者は「憲法について自由に意見表明することはたいへん大切」といいながら、公務員、教育者は「特別の地位を利用して運動を行う可能性もあり、影響は特段に高い」(自民党・船田元衆院議員)などと説明してきました(二十五日の参院憲法調査特別委)。

 しかし、仁比氏は「どうして公務員、教育者が特段に高い地位みたいな話になるのか」とのべ、企業幹部など社会的地位によって影響を及ぼしうる立場はたくさんあると指摘。「公務員、教育者に規制をかける憲法上の根拠はなにか」と追及しました。

 提案者は、公務の中立性、教育の中立性をあげましたが、仁比氏は「憲法を語ることがどうして職務の公正や教育の中立性を害するのか」と指摘。提案者は、公職選挙法で公務員などの地位利用禁止が憲法違反でないとの最高裁判決まで持ち出す混乱ぶりで、仁比氏は「国民投票運動の自由とは全然別の問題だ」とぴしゃりと批判しました。

 しかも、提案者はどういう行為が「地位利用」にあたるのかもまったく示してこなかったため、公選法同様、広範な規制が加えられる危険があります。仁比氏は「地位利用」違反に罰則は設けられなくても懲戒処分の対象となることから委縮効果が生まれるとのべ、「精神的自由、表現の自由」の侵害だとして、規制の撤回を求めました。



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